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2026年04月17日

韓国政府がトークン化預金の政府支出利用を実証へ。ブロックチェーンで効率性の向上を目指す

韓国政府がトークン化預金の政府支出利用を実証へ。ブロックチェーンで効率性の向上を目指す

1. ニュース概要

韓国の財政経済部(MOEF)は 2026年4月16日、ブロックチェーン基盤の「トークン化預金(Deposit Token)」を政府の運営経費支出に使用するパイロットプロジェクトを発表した。2026年第4四半期(10〜12月)に行政首都である 世宗(セジョン)市 で本格ローンチを目指し、「2026年 規制サンドボックス事業」として選定された形だ。


2. 背景:現行制度の事務負担

現行の 国家財政管理法 では、政府の運営経費(事業推進費等)は政府発行のパーチェスカードで処理する必要があり、深夜・週末などの制限時間帯の取引は事後の追加説明書類が求められ、事務負担が発生している。

今回はサンドボックス特例により、使用可能な時間帯・用途カテゴリーを事前に「トークン自体に埋め込む」プログラマブル決済 を試行し、以下の効果を狙う。

  • 透明性向上と事務削減
  • 仲介排除による小規模事業者の手数料軽減

3. 韓国における財政向けトークン化預金プロジェクトの全体像

今回の試行は韓国にとって 2件目 の財政向けトークン化預金プロジェクトとなる。

  • 2026年3月19日発表(先行事例):環境省・韓国銀行と連携し、EV充電インフラ補助金として 300億ウォン(約2,140万ドル) をトークン化預金で配布。
  • 2026年4月16日発表(今回):財政経済部(MOEF)が主管。世宗市での 政府運営経費 に充当し、第4四半期にローンチ予定。

両パイロットは韓国銀行のCBDC第2フェーズ 「プロジェクトHangang」 に接続しており、2030年までに国庫支出の25%をデジタル通貨系システムで処理する 目標の一環に位置づけられる。


4. トークン化預金とステーブルコインの違い

ここで重要なのは、トークン化預金が ステーブルコインと明確に異なる 点である。

  • トークン化預金:銀行の負債として既存金融システム内で機能するブロックチェーン上の預金のデジタル表現。銀行の貸借対照表と直接紐づく。
  • ステーブルコイン:民間発行体がブロックチェーン上で独自発行する通貨。

つまり韓国のアプローチは、規制・監督の連続性を保ったまま、プログラマブルな通貨機能を政府業務に組み込む ものといえる。


5. 関連動向

4月15日にはリップル社が韓国大手生命保険 Kyobo Life Insurance と提携し、韓国初のトークン化政府債券をブロックチェーン上で決済。決済サイクルを従来の2日から数秒に短縮することを発表している。

李在明(Lee Jae Myung)大統領の当選以降、現物仮想通貨ETF承認や取引所手数料引き下げを含む仮想通貨融和路線が加速しており、包括ルールである 「デジタル資産基本法」 の成立も視野に入る。韓国はG20のなかで最も速いペースで 「政府 × オンチェーン通貨」 の実装に踏み込んでいる。

事業開発インサイト

① 預金トークンは、ステーブルコインより先に B2G・B2B 決済の本命になる

ステーブルコインは規制対応・信用補完・発行体リスクといった論点が残る一方、預金トークンは 既存銀行の負債 として発行され、監督の連続性が担保される。

韓国が政府経費・補助金という 最も保守的なユースケース で預金トークンを採用した意味は大きく、「プログラマビリティは必要だが発行体リスクは取れない」法人・公共セグメントの標準規格 になる蓋然性が高い。

日本における事業機会

  • 三菱UFJ・みずほ・SBI などが推進する 預金型デジタル通貨プラットフォーム(DCJPY 等) への公共調達案件の接続
  • JPYC 等のステーブルコインと預金トークンの役割分担 を前提にした事業設計(JPYCは消費者・DeFi向け、預金トークンは企業・政府向け)
  • 金融機関にとっての 新規手数料収益源(発行・管理・プログラム実行ロイヤリティ)

② プログラマブル決済 = コンプライアンスコストを「前払い・自動化」する技術

韓国の狙いの本質は「仮想通貨導入」ではなく、経費精算・監査・報告業務の構造的削減 にある。

使用時間帯・品目カテゴリー・上限額をトークンに埋め込み、違反はそもそも決済が成立しない設計 は、経費精算〜監査のワークフローを根底から置き換える。

日本の経営者・企業視点での示唆

  • 企業の 法人カード・経費精算SaaS市場(Concur、楽楽精算、マネーフォワード等) は、プログラマブル決済による再定義リスクに晒される
  • 一方で、プログラマブル決済 × ERP × 会計監査 の統合ソリューションは新たな事業領域として浮上
  • 公共調達・補助金給付・労務報酬などの 条件付き支払い を必要とする業態(介護・保育・物流・インフラ保守)で BPO 高度化の商機

③ 「サンドボックス起点 × 段階展開」は最速で社会実装まで届くスキーム

韓国は 小さな成功を積み上げて法改正を誘導する方式 を採用している。

  1. EV充電補助金(5.6億ウォン規模)
  2. 政府運営経費(世宗市)
  3. 全国・全業務への展開

これは既存法(国家財政管理法がパーチェスカードを義務付け)を サンドボックス特例で一時無効化 しながら、本格的な「デジタル資産基本法」整備を並行して進める構造である。

事業開発上の示唆

  • 日本でも 経産省・金融庁のサンドボックス制度 を活用した、自治体 × 地銀 × Web3スタートアップの連携モデルが有効
  • 初期は「狭く・計測可能な」ユースケース(例:特定補助金、災害支援金、こども給付、地域通貨)で実証し、費用対効果の定量根拠をつくることが鍵
  • ベンダー側は 「政府・自治体の実験パートナー」ポジション の獲得が長期的参入障壁になる(韓国で預金トークン実証を担う銀行・SIer が将来の全国展開で優位に立つ構図)

出典:BitcoinEthereumNews.com / Cointelegraph / The Defiant / FX Leaders / CoinPost

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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