クラリティ法案、最大の障害を越え最終局面へ ― ステーブルコイン利回り妥協文公開、5月マークアップが正念場

公表された妥協の核心
5月1日に公表された新条文は、ステーブルコイン発行者および取引所が「銀行預金利息と経済的・機能的に同等」な利回りを直接・間接に提供することを禁止する一方、決済・送金・プラットフォーム利用に紐づく活動型リワードは容認する。発行者の準備金保有のみを根拠とする利回りは明確に禁じられ、子会社等を経由した抜け穴も塞ぐ設計となっている。米銀行業協会(ABA)はPoliticoへの広告出稿等で反対姿勢を維持するが、Tillis議員は4月29日、「銀行側の懸念は概ね対処済み」と述べ、Scott銀行委員長にマークアップ着手を促した。ホワイトハウス側は『最終ハードルが急速に崩れている』との見方を示しており、Coinbase CEOのArmstrong氏はX上で「マークアップせよ」と公開要求、Digital Chamber CEOのCarbone氏も「マークアップ前の最終障害解消への重要な一歩」と評価した。
残る論点と政治力学
焦点は3点に集約される。第1に、民主党が要求する「政府高官およびその家族の暗号資産事業利益禁止」条項(トランプ大統領一家を主たる対象)。Tillis議員は必要性を認めるが、銀行委員会版には含めない方針。第2に、Grassley司法委員長が主張する非カストディ型DeFi開発者保護を司法委員会で扱う動き。第3に、SEC・CFTC欠員委員ポストへの民主党推薦人選任。Lummis議員(銀行委デジタル資産小委員長)は「実質99%解決済み、残る摩擦は技術ではなく政治」と総括している。
残る5段階のハードルと確率
法案成立までに残るのは、上院銀行委員会マークアップ、上院本会議60票通過、上院農業委員会1月可決版との一本化、2025年7月に294-134で可決した下院版との両院調整、大統領署名の5段階。マークアップ最速は5月11日週、Memorial Day連休前の議会休会開始は5月21日、ミッドターム選挙休会前の実働は約11週間。Galaxy Researchの Alex Thorn 氏は成立確率を「50-50、もしくはそれ以下」と評価、Polymarketは2月の82%から5月1日時点で46%まで低下、Kalshiは7月前可決を15-19%、8月前を37%と算出。Moreno上院議員(共和・OH)は「5月末を逃せば数年単位で先送り」と警告し、Lummis氏は失敗時「次は2030年まで待つ」と踏み込んだ。Bessent財務長官、Atkins SEC委員長、Wittホワイトハウス暗号資産評議会事務局長の三者が政権側から明確に支持を表明している点が、過去の法案と異なる構造的支援要因となっている。
【事業開発に関するインサイト】
- リワード設計が競争優位を左右する:単純保有に対する利回りは禁止が確定的。取引所・ウォレット事業者は決済利用や取引量に連動するアクティビティ型リワードに設計を移行することで、規制適合と顧客獲得を両立する戦略が不可欠となる。クレジットカードのポイント還元モデルが参照点となる。
- 二系統のシナリオプランニングが必須:5月11日週マークアップ→7月本会議通過→夏季中の大統領署名という最短経路が成立する確率は5割前後。事業計画は「2026年Q3〜Q4施行ケース」と「2027年以降または2030年シナリオ」の両建てで策定し、トークン化RWAやステーブルコイン決済プロダクトのロードマップに反映すべき。
- 米国規制不在は資本流出の触媒:Bessent財務長官はドバイ・シンガポールへの資本流出を公に懸念表明。Y Combinatorの初ステーブルコイン投資(2026年4月)や、Q1のグローバルVC投資2,970億ドル(約45兆円)の暗号・AI隣接分野シフトが示すように、米国機関マネーは規制明確化を待たずに動き始めている。日本企業はアジア拠点活用と米国フランチャイズ確保のデュアル戦略を準備する好機。
【出典】
- CoinDesk「Clarity Act text lets crypto firms offer stablecoin rewards while shielding bank yield」(2026/5/1)
- CoinDesk「U.S. senator holding cards on Clarity Act's next move says it's ready to get to hearing」(2026/4/29)
- CryptoTimes「Clarity Act Stuck in Senate as Clock Ticks on 2026 Crypto Regulation」(2026/4/28)
- Disruption Banking「CLARITY Act Deadline: Senator Moreno's End-of-May Ultimatum Is Congress's Last Real Chance」(2026/4/23)
- 24/7 Wall St.「Polymarket's CLARITY Act Odds Just Hit a Three-Month Low」(2026/5/1)
- FinTech Weekly「The CLARITY Act's Biggest Obstacle Just Fell. Four Steps Still Remain.」(2026/3/21)
- Coinpedia「Will the Structure Market Bill (Clarity Act) Pass in May?」(2026/5/1)
- Congress.gov「H.R.3633 - Digital Asset Market Clarity Act of 2025」
※表記中の円表記は1ドル=約151円で換算した値
石田陽之(いしだあきひさ)
Cabinet株式会社 代表取締役
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