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2026年05月02日

SBI北尾氏「JPYCは潰れる」発言の真相──信託型「JPYSC」が突きつける円ステーブルコインの構造的競争

SBI北尾氏「JPYCは潰れる」発言の真相──信託型「JPYSC」が突きつける円ステーブルコインの構造的競争

過去最高益決算で示した「上限なし」の優位性

SBI HDが2026年5月1日に発表した2026年3月期連結最終利益は前期比2.6倍の4,275億円となり、4期ぶりに過去最高益を更新した。SBI VCトレード等を中核とする暗号資産事業の預かり資産残高は1兆2,000億円に到達し、国内首位級の顧客基盤に成長している。北尾氏はこの決算説明会の場で、Startale Groupと共同開発する円建てステーブルコイン「JPYSC(ジェイピーワイエスシー)」を2026年度第1四半期(4〜6月)にローンチする計画を改めて強調した。発行体はSBI新生信託銀行で、改正資金決済法上の「3号電子決済手段(特定信託受益権)」として設計され、JPYCに課されている1回100万円の送金上限の制約を受けない点が最大の競争優位だ。

北尾氏の「JPYC潰れる」発言とその文脈

北尾氏は同説明会で、JPYCについて「流通量が小さくインパクトがない」と批判し、過去にJPYC社の買収を打診したものの提示額が高額だったために断念した経緯を明かした。買収を断念した理由として「うちが作って動き出したら相手は潰れてしまう」と発言。圧倒的な自社顧客基盤と送金上限のない信託型ステーブルコインに対する自信の表明と読める。

JPYC側の実績──「少額・高回転」のリアルユース

一方のJPYC社は、2025年10月27日の正式発行から約半年で累計発行額22億円を突破。流通残高は約5億円、ホルダー数は約6万人、直近3カ月では2.6倍ペースで成長している。日次取引量が流通残高を上回る局面もあり、「動く通貨」として実需が回転している。2026年2月にはシリーズB 1stクローズで17.8億円を調達し、ソニー銀行とMOU締結、LINE NEXT「Unifi」採用、千房など実店舗決済も拡大中だ。岡部典孝代表は3年で発行残高10兆円を目標に掲げる。

競争構図はB2B大口 vs リテール少額

JPYSCは大口企業間決済・トークン化資産・クロスボーダー送金を主戦場とする一方、JPYCはリテール決済・Web3ネイティブ用途・少額高頻度送金で先行する。両者は法的区分(1号 vs 3号)とユースケースが異なり、競合というより市場の二層化を促す存在といえる。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 「制度設計が決める競争優位」:日本の電子決済手段は1号(資金移動型・100万円上限)と3号(信託型・上限なし)に分かれる。B2B大口決済を狙うなら3号、リテール高頻度決済なら1号と、ビジネスモデルの設計段階で制度区分の選択が勝敗を左右する。
  2. 「自社経済圏×ステーブルコイン」のフライホイール:SBIは1.2兆円の暗号資産預かり資産、SBI証券1,500万口座、ビットバンク子会社化検討など、決済・取引・カストディの統合経済圏を構築している。単独のステーブルコインプロダクトではなく、グループ顧客基盤と連動する流動性供給網が真の参入障壁となる。
  3. 競合関係はゼロサムではない:北尾氏の「潰れる」発言は印象的だが、JPYCのリテール22億円とJPYSCの大口B2B市場は実質的に競合領域がほぼ重ならない。新規参入企業はAPI連携・リテール/法人セグメンテーション・チェーン選択(Polygon、Strium等)で立ち位置を選ぶ余地が広い。

【出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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