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インフラ
2026年05月07日

ブロックチェーンは投機からインフラへ──パラダイムシフトの構造的読解と次の成長フェーズ

ブロックチェーンは投機からインフラへ──パラダイムシフトの構造的読解と次の成長フェーズ

数字が示す静かな地殻変動

2026年4月時点で、現実資産(RWA)のトークン化市場は約276億ドル(約4.3兆円)に達し、前年同期の66億ドルから約4倍に拡大した。とりわけ米国債のトークン化は150億ドル(約2.4兆円)を超え、Circle社のUSYC(29億ドル)とBlackRockのBUIDL(25.8億ドル)がツートップを形成している。BIS(国際決済銀行)は2034年までに世界GDPの10%がトークン化されると試算し、BCGとリップルは2033年に18.9兆ドル(約2,970兆円、年率約53%)まで拡大すると予測する。BlackRockのラリー・フィンクCEOは2026年の株主向け書簡で「トークン化は今、インターネットの1996年に相当する地点にある」と評した。

「トークンを売る」から「サービスを売る」へ

DePIN市場は2025年に179億ドル規模に育ち、世界経済フォーラムは2028年に3.5兆ドルへの到達を見込む。注目すべきは、トークン価格が史上最高値から94〜99%下落した銘柄も少なくない一方で、オンチェーンの年間経常収益(ARR)が伸び続けている点である。GPU分散コンピューティングのAethirは2025年第3四半期にARR 1.66億ドル(約260億円)、Render Networkは2026年1月単月で3,800万ドルの売上を計上。HeliumはT-Mobileと提携した月額15〜30ドルのモバイルプランで約60万契約を獲得し、米テレコム業界の構造に楔を打ち込んでいる。Messariのレポートによれば、評価軸はトークン時価総額からユニットエコノミクスとリカーリング収益へと完全に移行した。

制度整備と「目立たないインフラ」化

2026年3月5日、米銀行規制当局はトークン化証券に追加的資本規制を課さない方針を表明した。EUのMiCA規則は越境発行の参照点となり、JPMorganのKinexysは1日20億ドル超のトークン化決済を処理している。1980年代のバッチ処理に依存する小売決済を24時間365日のオンチェーン決済に置き換える布石として、カナダではTetra Digitalが規制準拠のCAD建てステーブルコインCADDを発行。Haun Venturesが2026年5月に10億ドル規模のファンドを公表したのも、消費者向けの投機ではなく「決済レール」「自律型エージェント経済」への構造投資という性格が明確である。

成功の指標は「不可視化」

このシフトの本質は、ブロックチェーンが「語られる対象」から「語らずに使われる対象」へ移行している点にある。TCP/IPがそうであったように、価値が高い技術ほど利用者からは見えなくなる。プロジェクトに求められるのも、トークン経済圏の物語ではなく、解約率、ユニットエコノミクス、エンタープライズ顧客とのSLAといった「退屈な指標」だ。失望の谷を抜けた今、勝者は派手さを捨て、収益と信頼性で評価される企業へと脱皮しつつある。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 評価軸のリプライス:「FDV」から「ARR」へ ── 投資家とアナリストは、トークンの完全希薄化評価額(FDV)ではなく、年間経常収益、解約率、CAC回収期間で判断する段階に入った。今後の事業計画は、最初からSaaS/インフラ企業に近い指標体系で組み立てるべきである。
  2. 機関投資家がオンチェーン入口 ── Chainalysisのデータによれば、RWA保有目的で新規作成されたウォレットが2026年に急増している。「個人→DeFi→機関」という従来のトリクルアップ構造は、「機関→RWA→オンチェーン経済」へと逆流している。日本企業はこの逆流の起点(規制対応RWAの組成・配信、トークン化マネー・マーケット・ファンド)に商機を見出すべきである。
  3. 「見えないインフラ」になる戦略 ── 成功するブロックチェーン事業は、ブランド露出ではなく既存システムへの埋め込みで価値を出す。決済、本人確認、サプライチェーンの裏側で動く「サイレント・インフラ」として、レガシー金融機関や政府との直接的な統合契約を取りに行くのが王道となる。コンシューマー向けトークン体験ではなく、B2B2Cの間接的な提供形態が中核となる。

【出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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