レポート一覧に戻る
国内
NFT
地方創生
Fireside Crypto
2026年05月10日

千葉市動物公園、動物の3DモデルNFTで運営資金を確保 ― 改めて問う「なぜNFTでなければならないのか」

千葉市動物公園、動物の3DモデルNFTで運営資金を確保 ― 改めて問う「なぜNFTでなければならないのか」

■ スキームの全体像

千葉市は2025年4月24日、建設コンサルタント大手のパシフィックコンサルタンツ株式会社と「公共インフラ等地域資源の3D・NFT活用事業」協定を締結。2025年10月29日に特設サイト(chiba-zoo-nft.com)でNFT販売を開始した。販売対象はニシゴリラ「モンタ」、ハシビロコウ「じっと」、チーター「フロド」「ズラヤ」の計4種で、各1,000円×10,000点の発行枠。4種+バックヤードツアー権付き「プレミアムパック」は15,000円×12点。最大潜在売上は約4,018万円。Googleアカウント認証で、暗号資産ウォレット非保有層に開かれた設計である。

■ 改めて問うべき論点:なぜNFTでなければならないのか

NFT施策には常に「会員サイト+DBでも代替可能ではないか」という疑問が付随する。千葉モデルもクローズドな閲覧体験という限りでは技術的に従来型有料会員制で代替可能だ。それでも「NFTでなければならない」と言える領域が一つあり、それがソフトウェアおよび高付加価値デジタルデータ(3Dモデル、CADデータ、設計ファイル等)の有償配布である。理由は三点。第一に、シリアルキー+認証サーバーに依存する従来モデルは提供元の永続稼働を前提とするが、NFTはオンチェーンで所有権を保持し、提供元が消滅しても証跡が残る。第二に、3Dデータ等は二次利用・改変・再配布の権利設計が事業価値そのものであり、スマートコントラクトはこれを機械的に執行できる。第三に、二次流通売上の一部が提供元へ自動還流する設計が可能となり、永久ライセンスの再収益化が成立する。実装事例として、CleverFilesがデータ復旧ソフト「Disk Drill」のライセンスをPolygon上で1本79 USDC(標準価格118米ドルの約3割引)のNFTとして発行している。

■ 国内・海外の比較

国内では長崎バイオパーク(2022年3月、カピバラ等のNFTトレカ各3,000円)、岡山県真庭市のフサヒゲルリカミキリ3D NFT(2025年6月、3,000円・SBT形式)、山形県西川町のカヌーセンター命名権NFT(2024年9月、150万円落札)など先行事例が並ぶ。海外比較対象はWWFドイツの「Non-Fungible Animals」で、Polygon上で絶滅危惧10種の発行数を野生個体数と一致させ、総6,266点を79〜799 USDCで販売、約30万米ドルを調達した。WWFは二次流通の10%が自動的にWWFへ還流する設計を実装し、永続的な保全資金確保に成功している。

■ 市場文脈

Fortune Business Insightsによれば、世界NFT市場は2025年に160.2億米ドル、2034年に1,025.9億米ドル(CAGR23.7%)まで拡大する見込み。自治体・公共施設向けの「ファンドレイジング型NFT」と、ソフトウェア・3Dデータ等の「有償配布型NFT」は、それぞれ独立した実需セグメントとして立ち上がりつつある。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 「なぜNFTか」の答えはソフトウェア/3Dデータ有償配布にある:NFTの本質的優位性は、提供元サーバーに依存しない所有証明・スマートコントラクトによる権利執行・二次流通ロイヤリティの三点に集約される。これらが効くのは、コピー容易だが本来は対価の発生する「ソフトウェア的デジタル資産」の販売である。千葉市動物公園は現状、3Dモデルを「閲覧体験」としてのみ売っているが、ダウンロード形式での頒布+商用二次利用ライセンス設計まで踏み込めば、動物園は地域固有種の3Dデジタルツインの権利保有者として、教育機関や映像制作者向け二次ライセンス収入という新たな収益軸を獲得し得る。
  2. 希少性設計と二次流通ロイヤリティの統合検討:WWFは「個体数=発行数」の希少性連動と再販10%還流を組み合わせ、寄附動機と継続収益を両立した。千葉モデルは1,000円×10,000点の薄利多売型で裾野拡大を狙うが、現状クローズド設計のため二次流通による永続収益機会を逸している。公共財源縮減時代のPPPモデルとして、両設計の統合余地は大きい。
  3. 「リアル特典の格」が成否を分ける:プレミアムパックには通常立入禁止のチーター・ハイエナ・ライオン・ゾウ舎を巡るバックヤードツアー権が付帯する。デジタル所有権単体への需要が頭打ちのなか、「NFT保有者しか得られない物理体験」を組み込めるかが共通成功条件。動物園・水族館・美術館等の体験型公共施設は同モデルの応用余地が最も大きいセグメントである。

【出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

免責事項

本レポートは、暗号資産および関連市場に関する情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定の暗号資産の購入、売却、保有その他一切の取引行為を推奨・勧誘するものではありません。また、金融商品取引法その他の関連法令に定める投資助言、投資勧誘、または金融商品の販売・媒介に該当するものではなく、税務・法務・会計上の助言を構成するものでもありません。

本レポートに記載された情報は、作成時点において信頼できると判断した情報源に基づいておりますが、その正確性、完全性、最新性、有用性等について当社は何ら保証するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本の毀損その他の損失が生じるリスクを伴います。投資判断は、利用者ご自身の責任と判断において行っていただくものとし、本レポートの利用に起因して生じたいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いかねます。

ブロックチェーン新規事業のご相談

Cabinetでは、アイデア段階からの壁打ち、技術検証(PoC)、そして実装・運用まで一気通貫で伴走する事業開発コンサルティングを提供しています。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

ニュースレターに登録する

本レポートに掲載した内容に加え、業界の最新情報・未公開レポートをメールでお届けします。