レポート一覧に戻る
既存金融
グローバル
RWA
Fireside Crypto
2026年05月10日

機関投資家がオンチェーン化に向かう4つの理由 — BlackRock時代に見る構造的シフト

機関投資家がオンチェーン化に向かう4つの理由 — BlackRock時代に見る構造的シフト

① 既存資産のオンチェーン化(RWA活用)

RWA市場は2026年初頭時点でステーブルコインを除き約200〜260億USDに到達し、前年比約300%成長を記録した。最大カテゴリーは米国短期国債のトークン化で、過去18カ月で600%超の伸びを示し約75億USD規模となっている。BlackRockのBUIDLは2026年5月時点で運用資産約25億USDとなり、トークン化国債市場の約40%を占める最大プレーヤーだ。利回り源泉は伝統金融商品そのものだが、24時間決済、即時担保化、コンポーザビリティ(他のオンチェーン取引での再利用)といった便益が機関投資家を惹きつける。すなわち「クリプトのリスクを取らずインフラだけを活用する」モデルである。

② 暗号資産保有のインカム化

クリプトを保有するという意思決定は分散投資・非対称リターンの観点で既に下されており、ステーキングは保有資産を遊ばせない副次的動機である。2026年3月12日、BlackRockはNasdaqで初のステーキング機能付きETF「iShares Staked Ethereum Trust(ETHB)」をローンチ、初週で2.54億USDを集めた。SECは2025年にリキッドステーキングが証券取引に該当しないと明確化、IRSもETPによるステーキングを容認。2025年11月にローンチしたSolana staking ETFは初月で10億USDのAUMを集積している。

③ 暗号資産特有の商品の存在

ファンディングレート裁定(Ethena USDe等)、ベーシス取引、リステーキング報酬など、伝統金融に対応物がない構造的アルファ源泉が存在する。クリプト市場の資本効率の悪さがアルファ源であり、専門ヘッジファンドが主たる担い手だ。AIMA/PwC調査では、ヘッジファンドの55%がクリプトに投資し、平均配分は資産の約7%に達する。約982億USDのヘッジファンド資産が調査対象となった。

④ ポートフォリオ全体でのシャープ改善

これが①〜③の前提となる最上流の動機である。個別資産のシャープレシオが劣っていても、低相関と非対称リターンによりポートフォリオ全体のシャープが改善する。Coinbase/EYの2025年調査では機関投資家の86%がクリプトエクスポージャーを保有または計画しており、平均配分はAUMの5%から9%へ上昇、3年以内に18%到達の見通しもある。Nomura 2026年4月調査でも約80%の機関が今後3年内に2〜5%のAUM配分を計画している。

【事業開発に関するインサイト】

  1. RWAは「クリプトのリスクを取らないクリプト活用」の主戦場である: 信用リスクは伝統金融商品と同等のまま、オンチェーン特有の便益のみを取りに行く構造は、保守的な機関にとって最も入りやすい入り口となる。日本の金融機関がオンチェーン参入を検討する際、ステーキングやDeFi利回りより先にRWA(特にトークン化国債・MMF)を起点とすることで、リスクテイクを最小化しつつインフラ習熟が可能となる。
  2. 「ステーキング機能の標準装備化」が新たなETF競争の決定要因となる: ETHBの成功により、Solana・Cardanoなど他PoSチェーンのstaking ETF申請が殺到している。スポット保有のみのETFは構造的に劣後するため、保有資産のインカム化機能を組み込めるプロダクト設計力(カストディアン選定、報酬配分設計、税務対応)が競争優位の鍵となる。
  3. 「動機別セグメンテーション」がプロダクト設計の必須要件となる: 4つの動機は顧客像、リスク許容度、求められる規制対応が異なる。RWA特化(伝統金融寄り)、ステーキング特化(長期保有層)、デルタニュートラル特化(ヘッジファンド層)、配分助言特化(年金・財団層)など、専門性を絞ったサービス設計が今後の主流となる。すべての機関を一括りにする総合型サービスは差別化が困難になる。

【出典】

免責事項

本レポートは、暗号資産および関連市場に関する情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定の暗号資産の購入、売却、保有その他一切の取引行為を推奨・勧誘するものではありません。また、金融商品取引法その他の関連法令に定める投資助言、投資勧誘、または金融商品の販売・媒介に該当するものではなく、税務・法務・会計上の助言を構成するものでもありません。

本レポートに記載された情報は、作成時点において信頼できると判断した情報源に基づいておりますが、その正確性、完全性、最新性、有用性等について当社は何ら保証するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本の毀損その他の損失が生じるリスクを伴います。投資判断は、利用者ご自身の責任と判断において行っていただくものとし、本レポートの利用に起因して生じたいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いかねます。

ブロックチェーン新規事業のご相談

Cabinetでは、アイデア段階からの壁打ち、技術検証(PoC)、そして実装・運用まで一気通貫で伴走する事業開発コンサルティングを提供しています。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

ニュースレターに登録する

本レポートに掲載した内容に加え、業界の最新情報・未公開レポートをメールでお届けします。