機関投資家がオンチェーン化に向かう4つの理由 — BlackRock時代に見る構造的シフト

① 既存資産のオンチェーン化(RWA活用)
RWA市場は2026年初頭時点でステーブルコインを除き約200〜260億USDに到達し、前年比約300%成長を記録した。最大カテゴリーは米国短期国債のトークン化で、過去18カ月で600%超の伸びを示し約75億USD規模となっている。BlackRockのBUIDLは2026年5月時点で運用資産約25億USDとなり、トークン化国債市場の約40%を占める最大プレーヤーだ。利回り源泉は伝統金融商品そのものだが、24時間決済、即時担保化、コンポーザビリティ(他のオンチェーン取引での再利用)といった便益が機関投資家を惹きつける。すなわち「クリプトのリスクを取らずインフラだけを活用する」モデルである。
② 暗号資産保有のインカム化
クリプトを保有するという意思決定は分散投資・非対称リターンの観点で既に下されており、ステーキングは保有資産を遊ばせない副次的動機である。2026年3月12日、BlackRockはNasdaqで初のステーキング機能付きETF「iShares Staked Ethereum Trust(ETHB)」をローンチ、初週で2.54億USDを集めた。SECは2025年にリキッドステーキングが証券取引に該当しないと明確化、IRSもETPによるステーキングを容認。2025年11月にローンチしたSolana staking ETFは初月で10億USDのAUMを集積している。
③ 暗号資産特有の商品の存在
ファンディングレート裁定(Ethena USDe等)、ベーシス取引、リステーキング報酬など、伝統金融に対応物がない構造的アルファ源泉が存在する。クリプト市場の資本効率の悪さがアルファ源であり、専門ヘッジファンドが主たる担い手だ。AIMA/PwC調査では、ヘッジファンドの55%がクリプトに投資し、平均配分は資産の約7%に達する。約982億USDのヘッジファンド資産が調査対象となった。
④ ポートフォリオ全体でのシャープ改善
これが①〜③の前提となる最上流の動機である。個別資産のシャープレシオが劣っていても、低相関と非対称リターンによりポートフォリオ全体のシャープが改善する。Coinbase/EYの2025年調査では機関投資家の86%がクリプトエクスポージャーを保有または計画しており、平均配分はAUMの5%から9%へ上昇、3年以内に18%到達の見通しもある。Nomura 2026年4月調査でも約80%の機関が今後3年内に2〜5%のAUM配分を計画している。
【事業開発に関するインサイト】
- RWAは「クリプトのリスクを取らないクリプト活用」の主戦場である: 信用リスクは伝統金融商品と同等のまま、オンチェーン特有の便益のみを取りに行く構造は、保守的な機関にとって最も入りやすい入り口となる。日本の金融機関がオンチェーン参入を検討する際、ステーキングやDeFi利回りより先にRWA(特にトークン化国債・MMF)を起点とすることで、リスクテイクを最小化しつつインフラ習熟が可能となる。
- 「ステーキング機能の標準装備化」が新たなETF競争の決定要因となる: ETHBの成功により、Solana・Cardanoなど他PoSチェーンのstaking ETF申請が殺到している。スポット保有のみのETFは構造的に劣後するため、保有資産のインカム化機能を組み込めるプロダクト設計力(カストディアン選定、報酬配分設計、税務対応)が競争優位の鍵となる。
- 「動機別セグメンテーション」がプロダクト設計の必須要件となる: 4つの動機は顧客像、リスク許容度、求められる規制対応が異なる。RWA特化(伝統金融寄り)、ステーキング特化(長期保有層)、デルタニュートラル特化(ヘッジファンド層)、配分助言特化(年金・財団層)など、専門性を絞ったサービス設計が今後の主流となる。すべての機関を一括りにする総合型サービスは差別化が困難になる。
【出典】
- Grayscale 2026 Digital Asset Outlook: https://research.grayscale.com/reports/2026-digital-asset-outlook-dawn-of-the-institutional-era
- The Block 2026 Institutional Crypto Outlook: https://www.theblock.co/post/382743/2026-institutional-crypto-outlook
- CoinDesk - BlackRock Tokenization Push (2026年5月9日): https://www.coindesk.com/business/2026/05/09/blackrock-deepens-tokenization-push-with-new-onchain-fund-offerings
- Yellow.com - RWA Tokenization Crosses $20B (2026年5月): https://yellow.com/research/real-world-asset-tokenization-20-billion-record
- RWA.xyz Analytics Dashboard: https://app.rwa.xyz/
- AMINA Bank - Current State of Staking: https://aminagroup.com/research/the-current-state-of-staking-institutional-adoption-at-scale/
- Everstake - Staking for Treasuries: https://everstake.one/resources/blog/staking-treasury-strategy-institutional-pos-2026
- Coinbase & EY-Parthenon Institutional Investor Digital Assets Survey 2025: https://www.ey.com/content/dam/ey-unified-site/ey-com/en-us/insights/financial-services/documents/ey-growing-enthusiasm-propels-digital-assets-into-the-mainstream.pdf
- KuCoin - Nomura 2026 Institutional Report分析: https://www.kucoin.com/blog/why-80-of-global-firms-are-allocating-to-defi-and-digital-assets-in-2026
- CoinLaw Institutional Adoption Statistics 2026: https://coinlaw.io/cryptocurrency-adoption-by-institutional-investors-statistics/
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