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2026年05月22日

Ordinals/BRC-20が脱税ツールに──イタリア当局、Chainalysis Reactorで「インスクリプション収益化サイクル」を解明

Ordinals/BRC-20が脱税ツールに──イタリア当局、Chainalysis Reactorで「インスクリプション収益化サイクル」を解明

事件の構造──「インスクリプション収益化サイクル」

イタリア・フォッジャ財務警察(Guardia di Finanza)経済金融警察部隊と、ローマのプライバシー保護・技術犯罪特別部隊は、当初「単純な未申告所得の調査」として着手した案件から、複数年にわたる大規模脱税スキームを掘り起こした。容疑者は、押収されたLedger製ハードウェアウォレットを起点に、Ordinalsプロトコルでサトシ単位にデータを刻む「インスクリプション」を行い、BRC-20規格で代替可能トークンを発行。マーケットプレイスで原価の数倍で売却し、得たBTCを主要ウォレットクラスタへ還流させ、再びインスクリプション原資に充てるという循環構造を構築していた。総額は100万ユーロ(約1.16百万ドル/およそ1.7億円)超の未申告キャピタルゲインに達し、加えて公的補助金の不正受給も併発していた。

解明の決め手──Reactorとアドレスクラスタリング

捜査の中核を担ったのはChainalysisの分析ツール「Reactor」である。ハードウェアウォレットが自動生成する複数の受取アドレス群は、Bitcoinの UTXO(未使用トランザクション出力)モデル上で取引履歴を分散させるが、所有権ヒューリスティクスを用いたアドレスクラスタリングにより、断片的に見えた取引群が一貫した収益生成パターンとして可視化された。最終的に、KYC情報を保有する中央集権型取引所のレコードと突合することで、オンチェーンの活動と実在の人物が結びつけられた。

構造的背景──Ordinals/BRC-20の拡大と税務当局のキャッチアップ

2023年に登場したOrdinalsとBRC-20は、Bitcoinネットワーク上にスマートコントラクトなしでNFT・代替可能トークンを実装する規格として急成長し、業界レポートでは2023年から2024年初頭にかけてBitcoinのトランザクション手数料の約22%をインスクリプション関連が占めたとされる。一方、米国の暗号資産保有者で利益を申告しているのは推計32〜56%、ノルウェーでは12%に留まり、税務遵守の遅れは構造的課題である。OECDが策定した暗号資産等報告枠組み(CARF)は2026年1月1日に日本でも施行され、2027年に48か国超で初回の情報交換が予定される。Ordinalsのような新規アセットクラスがCARFの実務対象としてどこまで捕捉されるかが、次の論点となる。

【事業開発に関するインサイト】

  1. コンプライアンス=匿名性の終焉という市場メッセージ:本件はOrdinals/BRC-20マーケットプレイスや関連ウォレット事業者にとって、「KYC連携を欠いた取引導線」がもはや差別化ではなくリーガルリスクであることを示す。日本国内でCARF施行が始まった2026年において、トラベルルール対応に加え、インスクリプション系資産の取引履歴を税務当局向けに証跡化できる仕組みは、機関投資家マネー取り込みの前提条件になる。
  2. ブロックチェーン分析ツールはB2B市場として確立フェーズに:ChainalysisのReactorのように、捜査機関の標準ツールとして採用される事例が国境を越えて積み重なっており、分析プラットフォーム市場は「金融機関のAML向け」から「税務・補助金不正・労務犯罪まで横断する公共調達市場」へ拡張している。日本の事業者にとっては、海外パートナーとの連携や国内向けローカライズ版の提供余地がある。
  3. NFT/インスクリプション系プロダクトの設計に「税務UX」を組み込む競争:Ordinals/BRC-20系のマーケットプレイスや発行ツールが、ユーザー側のキャピタルゲイン自動計算・CARF対応レポート出力を提供できれば、規制下での正当な投資チャネルとしての地位を確立できる。逆にこれを怠ると、本件のような摘発事例が積み重なるたびに「脱税ツール」のラベリングが強まり、ブランド毀損と機関投資家からの忌避が加速する。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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