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2026年06月01日

ワールドカップが起こした「見えないブロックチェーン」革命——FIFAチケットがAvalancheを24倍に

ワールドカップが起こした「見えないブロックチェーン」革命——FIFAチケットがAvalancheを24倍に

何が起きたのか

2026年6月1日、Avalanche成長担当SVPのArielle Penningtonは、FIFAワールドカップのチケット関連取引がAvalanche上で爆発的に増えたと明かした。開幕前の数日だけで6万件超のトランザクションが発生し、取引量は通常水準の最大24倍、アクティブアドレスは約10倍に達した。大会本番前の数字である点が、需要の大きさを物語る。約350万人の観客動員が見込まれる巨大イベントが、チケット清算の一部をオンチェーンへと押し上げた。

技術構成——「裏側で動く」設計

FIFAは収集品・チケットのプラットフォーム「FIFA Collect」を、従来のAlgorandからAvalanche上の独自レイヤー1(カスタムL1)へ移行した。技術提供はModex社で、EVM互換・MetaMask連携・低手数料を備え、取引にはAvalanche C-Chain上のUSDCが用いられる。Penningtonが強調したのは「ユーザーがブロックチェーンの内部構造を意識せずに使える」点だ。これまで業界は「ブロックチェーンそのものに関心を持たせる」ことに労力を割いてきたが、今回は技術を背景に隠し、利便性だけを前面に出すことで普及が進んだという主張である。

RTBの仕組みと収益構造

「Right-to-Buy(RTB)」は、保有者に対し、応援チームが勝ち上がった場合に額面でチケットを購入できる優先権を与えるNFTである。チケットそのものではなく「購入する権利」を表す。価格は999ドル(約16万円)前後から始まり、チーム成績やレアリティに応じて二次流通市場では最大3万ドル(約470万円)で取引された例もある。FIFAは二次流通の手数料収入を得る構造で、2025年時点で発売数カ月で約1,500万ドル(約24億円)を売り上げたとされる。2022年大会で340万席に対し2,300万件の購入希望が殺到した「需要管理」の解決策とFIFAは位置づける。

規制リスク——賭博か、収集品か

新しさは規制上のグレーゾーンを生んだ。スイスの賭博監督機関Gespaは、RTBが「無許可の賭博(くじ・スポーツ賭博)」に当たる可能性があるとして2025年10月に刑事告発を行った。米国でもニューヨーク州司法長官Letitia Jamesとニュージャージー州司法長官Jennifer Davenportが、FIFAのチケット販売手法を調査している。FIFA側は不正を否定し、オンチェーン清算とRTB販売を継続中だが、複数法域での法的評価が定まらないまま大会を迎えた点はリスクとして残る。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 「技術を隠す」UX設計が新規事業の普及速度を決める——今回の急増は、利用者がブロックチェーンを意識しないまま「優先購入権」という価値だけを受け取れた点に起因する。新規事業では、技術そのものの啓蒙より、既存の購買体験に溶け込ませ便益だけを前面化する「裏側で動く」設計が、マスアダプションの近道になる。技術は手段であって目的ではない、という原則の実例である。
  2. 大型イベントは広告では買えない顧客獲得チャネルになる——350万人規模の実需イベントが、単独では到達不可能なオンボーディングを一気に実現した。新規事業においては、巨大な既存需要が集まる「アンカーイベント」に製品を組み込むことが、強力な獲得装置になりうる。ただし急増はイベント駆動であり、本当の勝負は終了後の継続利用(リテンション)をどう設計するかにある点も同時に示している。
  3. 新カテゴリー創出は規制分類の空白を必ず伴う——RTBは「収集品・賭博・金融商品」の境界を曖昧にし、複数国の当局調査を招いた。前例のない資産や仕組みを生み出す事業は、規制上の分類が未確定であることを前提に、KYC/AML・地域制限・賭博性を排した商品設計を「後付け」ではなく初期段階から組み込む必要がある。イノベーションの速度とコンプライアンス設計は同時並行で進めるべきである。

【引用:出典】

  • CoinDesk「Avalanche Network Explodes as FIFA World Cup Drives 60,000 Blockchain Ticket Transactions」(2026年6月1日)
  • news.bitcoin.com(同題、2026年6月1日)
  • Cointrust「FIFA World Cup Ticketing Drives Avalanche Blockchain Growth」(2026年6月)
  • gncrypto.news「FIFA World Cup Sparks 60,000+ Ticket Transactions on Avalanche」(2026年6月2日)
  • Decrypt / Yahoo Sports「FIFA Hit With Swiss Criminal Complaint Over NFT World Cup Ticket Vouchers」(2025年10月)
  • Tekedia「GESPA Files Criminal Complaint Against FIFA Collect」(2025年10月)
  • Yahoo Finance「Is a FIFA Crypto Coming? Blockchain World Cup Tickets Probed」(2025年10月)
  • Bitwise「Bitwise Launches Spot Avalanche ETP (BAVA)」(2026年4月)
監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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