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2026年06月18日

Kaia、JPYC流通残高で国内首位へ——「LINE経済圏」と韓国メガバンク連携が拓くアジア決済網

Kaia、JPYC流通残高で国内首位へ——「LINE経済圏」と韓国メガバンク連携が拓くアジア決済網

わずか1カ月で実現した「発行チェーン首位」

JPYCは2025年10月施行の改正資金決済法に基づく電子決済手段で、2025年8月に金融庁の資金移動業ライセンスを取得して以降、Ethereum・Polygon・Avalancheの3チェーンで展開してきた。ここに2026年5月中旬、発行・償還基盤「JPYC EX」のアップデートでKaiaが第4のチェーンとして加わった。オンチェーンデータ「JPYC info」によれば、Kaia上の流通残高は約3.84億JPYC(記事執筆時点)とPolygonの約3.31億JPYCを上回り、対応開始からわずか1カ月で残高首位に立った。Kaiaは1秒ファイナリティとガス代委任機能を備えるEVM互換L1で、高速・低コストが流入の要因とされる。

「首位」の中身——残高は最大、利用者は最少という非対称

ただし「首位」の内実には注意が要る。JPYC全体の累計発行額は33億円超、現在の総流通量は約9.5億JPYC、利用者は約1万9,000アカウント・オンチェーンアドレスは6万超に達する。一方、チェーン別の保有アドレス数はPolygonが約36,000、Avalancheが約23,000、Ethereumが約1,600に対し、Kaiaは約850にとどまる。つまりKaiaの優位は「少数アドレスに大口残高が集中した結果」であり、リテール層への広がりではなく、流動性プールや事業者ウォレット主導の構造を示唆する。単一指標での「No.1」評価が実態を覆い隠す典型例といえる。

2億MAUを抱える「LINEという流通網」

普及を支えるのが、LINE NEXT社のWeb3ウォレット「Unifi」との連携だ。Kaiaは旧Klaytn(カカオ系)と旧Finschia(LINE系)の統合で誕生した経緯を持ち、月間アクティブユーザー約2億人のLINEを入口にできる。JPYC株式会社の岡部典孝CEOは「ステーブルコインが実験の枠を超え、実生活に定着するフェーズに入った」と述べた。技術的優位そのものより、巨大な既存ユーザー接点を持つチェーンが選ばれた点が本質である。

KB国民銀行PoCが示すクロスボーダーの本命

Kaiaはアジア展開の一環として、韓国メガバンクのKB国民銀行、決済事業者KGイニシス、デジタル資産企業OpenAssetとウォン建てステーブルコインのPoCを実施した。店舗QR決済の精算をスマートコントラクトで自動化したほか、韓国→ベトナムの送金で、ウォン建てトークンをオンチェーン流動性経由で米ドル連動資産に転換し現地銀行口座へ着金させる処理を3分以内・SWIFT比約87%のコスト削減で実証した。韓国ではKB含む主要8行がウォン建てステーブルコイン連合を準備し、ドル建てが99%(約2,390億ドル)を占める市場への対抗軸を模索している。痛点の大きいクロスボーダー送金を起点に、規制整備の前から先行者ポジションを築く構図だ。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 「No.1」訴求は分母の定義を精査せよ。 Kaiaは流通残高で首位だが保有アドレス数は最少(約850)であり、同じ「首位」でも普及の実態は真逆になり得る。新規事業のKPI設計では、残高・件数・アクティブ率など複数指標を並走させ、訴求しやすい単一指標が実態を歪めていないかを常に検証する規律が求められる。
  2. 技術的優位より「ディストリビューション(流通網)」が普及を決める。 JPYCが多数チェーンの中でKaiaで急伸した最大要因は、TPSやコストそのものより、月間2億MAUのLINEという既存ユーザー接点に乗れたことにある。自前でユーザー獲得を急ぐより、巨大な顧客基盤を持つプラットフォームへ「寄生」する連携設計が、新規プロダクトの立ち上がり速度を左右する。
  3. 痛点の大きいユースケースを起点に、規制整備前の先行者ポジションを取る。 SWIFT比約87%削減というクロスボーダー送金の明確なコスト優位は、制度が固まる前でもPoCで実需と運営体制を先に確立する好機を生む。表に出る顧客体験は従来通りに保ちつつ、精算レイヤーをブロックチェーンに置き換えるB2B2C設計は、UXを壊さずに新技術を浸透させる定石となる。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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