Figureが築く「オンチェーン資本市場」──取引高データで読む、トークン化クレジット市場の輪郭

Figureとは:組成から流通までを担うオンチェーン資本市場
Figure Technology Solutions(2018年設立、本社ネバダ州リノ、共同創業者マイク・キャグニー氏ら)は、トークン化資産の組成・資金供給・売却・取引を一体で担う「ブロックチェーン・ネイティブな資本市場」だ。自社のProvenanceブロックチェーン上で、住宅担保ローン(HELOC)を中心に、これまで380社超のパートナーと累計250億ドル超のローンを組成してきた。独自のローン組成システム(LOS)とブロックチェーンの統合により、ローン承認を約10日に短縮し、製造コストを従来比で約93%削減したとされる。主力は、消費者信用マーケットプレイス「Figure Connect」と、オンチェーンの貸借市場「Democratized Prime」、そしてSEC登録の利回り付きステーブルコイン「$YLDS」である。
取引高データ:前年比2倍超で拡大するマーケットプレイス
取引高の伸びは顕著だ。2026年第1四半期の消費者ローンマーケットプレイス取引高は29億ドル(前年同期比113%増)に達し、純利益は4,500万ドル。同四半期には過去最多の80社(Flagstar Bank等を含む)が新規参加し、アクティブパートナーは387社となった。直近の2026年5月単月では、マーケットプレイス取引高は14.0億ドル(前年同月比135%増、前月比5%増)。$YLDSの流通残高は5.57億ドル、Democratized Primeでは借り手需要が4.12億ドル、貸し手供給が5.00億ドル(前月比17%増)へと積み上がった。調整後EBITDA利益率は直近12カ月で約43%、経営陣は長期的に60%超を目標に掲げる。Figureはトークン化private credit市場で約75%のシェアを持つとされる。
直近の動き:オンチェーン株式(OPEN)とKiavi買収
2026年に入り、Figureは事業領域を一段拡張した。1月には「OPEN(オンチェーン株式ネットワーク)」を立ち上げ、株式をトークン化レプリカではなくブロックチェーン上でネイティブに発行・取引し、自社の認可されたATS(代替取引システム)で売買する構想を示した。Nasdaq上場株との交換も可能とし、Democratized Primeを通じたオンチェーン株式貸借も視野に入れる。6月10日には、住宅投資家向けAIレンディングのKiaviを買収する合意を発表(Sixth Streetとの合弁でバランスシート資産を取得)。これによりFigure Connectに年間70億ドル超の新規ファーストリーン(第一順位)取引高、Democratized Primeに月間1億ドル超が加わる。さらにAIエージェント同士の自動オンボーディング「Adaptor」の初ユースケースにもなる。5月にはSMB向けCredibly、証券トークン化のOpenWorldとの提携も発表している。
形成されつつある市場と、株価の温度差
Figureが築こうとしているのは、組成・資金供給・流通をオンチェーンで垂直統合した「資本市場そのもの」だ。HELOC、ファーストリーン住宅ローン、自動車・SMBローンへと資産クラスを広げ、OPENでは証券保管振替(DTCC等)やプライムブローカーの中抜きを狙う。一方、株価は2026年1月20日の最高値78.00ドルから、6月下旬には32〜33ドル前後へ調整し、年初来で約24%下落。時価総額は約59億ドルとなった。Bernsteinは同社を2026年の「ベストアイデア」と位置づけ目標株価72ドルを掲げる一方、株式トークン化は長期的なオプショナリティと見る。事業の急成長と、規制・流動性の不確実性に対する市場の慎重さが併存している。
【事業開発に関するインサイト】
- 「フルスタックのオンチェーン資本市場」という垂直統合がネットワーク効果を生む。Figureは組成(LOS)・資金供給(Democratized Prime/$YLDS)・流通(ATS/OPEN)を一気通貫で押さえることで、コスト93%減・承認10日という効率を実現し、トークン化private creditで約75%という支配的シェアを築いた。発行体・パートナー・資金の好循環が参入障壁になり、後発が単一機能で切り崩すのは難しい構造だ。
- SEC登録ステーブルコイン$YLDSが「資金供給の燃料」として機能する。$YLDSは決済通貨であると同時に、Democratized Primeにおける貸し手供給の原資となり、利回り付きで滞留資金を呼び込む。ステーブルコインとオンチェーン融資を同一エコシステム内で循環させる設計は、ステーブルコイン発行体が「決済」から「資本市場の資金供給基盤」へ進化する道筋を示している。
- 出口戦略は「中間業者の置き換え」であり、規制が最大の変数になる。OPENによるオンチェーン株式と株式貸借は、DTCCやプライムブローカーといった既存インフラの中抜きを正面から狙う。これは巨大なTAM(獲得可能市場)である反面、証券決済の規制・流動性確保という難所を伴う。最高値78ドルから32ドルへの調整は、成長期待と制度不確実性の綱引きを映しており、事業者にとっては規制対応そのものが競争力の分岐点となる。
【引用:出典】
- Figure Technology Solutions / GLOBE NEWSWIRE「Figure Technology Solutions Reports First Quarter 2026 Results」(StockTitan経由)https://www.stocktitan.net/news/FIGR/figure-technology-solutions-reports-first-quarter-2026-results-1ke1h02qv6la.html
- StockTitan「Figure Technology Solutions Reports May 2026 Operating Data」https://www.stocktitan.net/news/FIGR/figure-technology-solutions-reports-may-2026-operating-n3vj9oyzbwkm.html
- Sixth Street「Figure Enters into Agreement to Acquire Kiavi, Bolstering Blockchain-Native Marketplace」https://sixthstreet.com/investment_announce/figure-enters-into-agreement-to-acquire-kiavi-bolstering-blockchain-native-marketplace/
- The Block「Figure unveils onchain equity network aimed at remaking stock trading and lending」https://www.theblock.co/post/385595/figure-onchain-equity-network-aimed-remaking-stock-trading-lending
- Bloomberg「Figure Technology Launches Blockchain Platform for Direct Stock Lending」https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-01-14/figure-technology-to-enable-direct-stock-lending-over-blockchain
- TradingView「FIGR Stock Price and Chart — NASDAQ:FIGR」https://www.tradingview.com/symbols/NASDAQ-FIGR/
- Seeking Alpha「Figure Technology: Marketplace Keeps Expanding Aggressively」https://seekingalpha.com/article/4888928-figure-technology-marketplace-keeps-expanding-aggressively
- 参考(アクセス不可):毎日経済新聞 mk.co.kr https://www.mk.co.kr/jp/stock/12083157
石田陽之(いしだあきひさ)
Cabinet株式会社 代表取締役
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