スクエニ×エネチェンジ、脱炭素アプリにOasys採用——「ゲーミフィケーション×ブロックチェーン」で生活者の行動変容を狙う

何を発表したのか
スクウェア・エニックスは6月29日、ENECHANGE(東証グロース上場、証券コード4169)と共同で、生活者の脱炭素行動を促す新サービスを開発すると発表した。サービス開始は2026年内を予定する。本プロジェクトは、環境省が推進する脱炭素型ライフスタイル普及の国民運動「デコ活」の補助事業において、「ゲーミフィケーションを活用した脱炭素型ライフスタイル転換促進事業」として採択されている。スクエニのエンタメ知見と、ENECHANGEのエネルギー・脱炭素領域の知見・プラットフォームを掛け合わせる座組だ。
仕組み:ミッション達成でポイント、キャラ育成で継続を促す
サービスでは、節電や省エネといった日常の脱炭素アクションを「ミッション」として設定し、達成するとポイントを獲得できる。アプリ独自の世界観のもとでキャラクターを育成する要素を盛り込み、キャラクターの成長に応じて獲得ポイントが増える設計とすることで、継続利用を促す。ポイントの原資は広告収入と企業・団体のスポンサー収入で、いわゆる「ポイ活」の共通ポイントやサービス内ゲームアイテムへの交換を予定する。ミッションは脱炭素に取り組む自治体・企業との連携で随時更新・拡充し、地域課題の理解やGX製品・サービスの啓発にもつなげる。
なぜOasysなのか——PoSと「改ざん耐性」
データ管理には、環境配慮型のプルーフ・オブ・ステーク(PoS)方式を採用するブロックチェーン「Oasys」を用いる。改ざんが困難な仕組みにより、ポイント付与や成果記録の透明性・信頼性を確保する狙いだ。Oasysはゲーム特化のレイヤー1として知られ、2022年12月にメインネットのローンチを完了。現在はアジア発のトークン化資産基盤としても展開を広げている。スクウェア・エニックスは2022年9月にOasysの初期21バリデータの1社として参加しており、現在もバリデータとして名を連ねる。既存の関係を土台に、ゲーム外の社会課題領域へ踏み出した形だ。
将来像と論点
日本は2050年カーボンニュートラルを掲げ、2030年度に温室効果ガスを2013年度比46%削減(家庭部門は66%削減が必要)を目標とする。一方で生活者側は「情報不足」「意識して行動を続けにくい」といった継続の壁を抱える。本サービスは、この行動変容の難しさをエンタメの継続設計で解こうとする試みだ。論点は3つ。第一に、現時点でブロックチェーンの具体的役割は「記録の透明性確保」にとどまり、トークンやNFTの有無など詳細は未開示である点。第二に、「脱炭素」を掲げる以上、消費電力の大きいPoWではなくPoS型Oasysを選ぶ整合性が重要で、この選定はその批判をあらかじめ回避する意味を持つ。第三に、初期は補助金が信頼と資金を担保するが、事業としての持続性は広告・スポンサー原資への移行と共通ポイント経済圏への接続にかかっている。
【事業開発に関するインサイト】
- 大手IPホルダーが「投機」ではなく「行動記録の透明性」という裏方用途でブロックチェーンを実装する、エンタメ×社会課題型のユースケースだ。自治体・企業をスポンサーおよびミッション提供者として巻き込むB2B2Cの座組は、GX文脈における企業協賛・広告の新チャネルになり得る。ポイントや会員基盤を持つ事業者にとって、既存ロイヤルティ施策を「透明性のある成果記録」と結びつける発想は応用余地が大きい。
- Oasysは「ゲーム特化L1」から「アジア発のトークン化資産基盤」へ領域を広げており、スクエニのような既存バリデータのIP企業を核に、ゲーム外(脱炭素・地域課題)のユースケースを取り込む戦略が見て取れる。自社がゲーム/IP/ポイント事業を持つ場合、既存経済圏のオンチェーン化・相互運用の検討はOasysのようなアプリチェーンL1との連携が現実的な選択肢になる。
- 環境省デコ活採択という「公的裏付け+補助金」が初期の信頼と原資を担保する一方、補助事業依存は持続性の論点となる。事業化の鍵は、広告・スポンサー収入への移行、共通ポイント/ポイ活経済圏との接続(交換レート・景品表示法・税務の整理)、そして「行動変容」を定量化するKPI設計にある。ここを設計できれば、脱炭素以外の健康・地域活性など横展開の余地も広い。
【引用:出典】
- PR TIMES(スクウェア・エニックス公式リリース): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000382.000128734.html
- CoinPost「スクウェア・エニックス、脱炭素アプリにブロックチェーン採用」: https://coinpost.jp/?p=721571
- あたらしい経済「スクエニとエネチェンジ、脱炭素アクション後押しする新サービス開発開始、Oasys採用で」: https://www.neweconomy.jp/posts/587599
- NADA NEWS「スクエニ、脱炭素支援サービスにOasys活用へ──エネチェンジと共同開発」: https://www.nadanews.com/357416/
- AMP「スクウェア・エニックスとENECHANGE、脱炭素アクションを後押しする新サービスを共同開発へ」: https://ampmedia.jp/2026/06/29/square-enix-enechange
石田陽之(いしだあきひさ)
Cabinet株式会社 代表取締役
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