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2026年08月27日

3年3か月で、わずか2社 ── コインチェックの電子決済手段等取引業登録が映す「流通の細さ」

3年3か月で、わずか2社 ── コインチェックの電子決済手段等取引業登録が映す「流通の細さ」

3年2か月余で、わずか2社

金融庁が公表する電子決済手段等取引業者登録一覧は、2026年8月27日現在で全業者数を2と記している。第00001号はSBI VCトレードで、登録日は2025年3月4日。第00002号がコインチェックで、同じく渋谷を本店とする法人だ。ステーブルコインを電子決済手段として位置づけた改正資金決済法の施行は2023年6月1日である。施行から第1号の登録まで1年9か月、第1号から第2号までさらに1年5か月余を要した計算になる。制度の入口は開いているが、通過した事業者は3年余で2社にとどまる。

提携発表から登録完了まで、ちょうど2年6か月

コインチェックが米サークルとの提携を発表したのは2024年2月27日だった。当時のリリースは、USDCの取扱いには電子決済手段等取引業の登録取得が条件になると明記している。その条件が満たされたのが2026年8月27日、すなわち提携発表からちょうど2年6か月後である。この30か月という数字は、経営層が事業計画を引く際に極めて実用的な意味を持つ。パートナーシップの発表は、収益計上の起点ではない。制度対応を経て実際にサービスが立ち上がるまでには、この規模の事業者でも2年半を要するという実測値が、いま初めて2件目のサンプルとして得られた。

取扱いは「USDC1銘柄」

見落とされやすいが、登録一覧には各業者が取り扱う電子決済手段の銘柄が個別に記載される。SBI VCトレードはUSDC、RLUSD、JPYSCの3銘柄を掲げているのに対し、コインチェックの記載はUSDCの1銘柄のみである。つまり登録は「ステーブルコイン全般を扱える資格」ではなく、銘柄が特定され公示される構造になっている。金融庁はこの記載について、業者の説明に基づき資金決済法上の定義に該当することを確認したにすぎず、価値を保証・推奨するものではないと明示している。裏を返せば、どの銘柄を載せるかは各社の戦略判断であり、そこに競争が生まれる。

「発行」は増えるのに「流通」が増えない

日本の制度設計は発行者と仲介者を分離した。その結果、発行側の顔ぶれは急速に厚みを増している。JPYCは資金移動業型として2025年10月に発行を開始し、2026年7月10日時点でオンチェーン流通額20億円を突破、シリーズBで累計約60億円を調達した。SBIグループとStartaleは2026年6月24日、国内初の信託型円建てステーブルコインJPYSCの提供を開始した。3メガバンクは2026年6月に共同発行に向けた協議会を設置し、2026年度中の実取引開始を目指す。日本ブロックチェーン基盤のEJPYも表明済みだ。さらに2026年6月1日施行の改正内閣府令により、外国発行の信託型ステーブルコインも電子決済手段として正式に位置づけられた。

発行体の選択肢は2026年度中に一気に増える。しかしそれを顧客に届ける電子決済手段等取引業者は、現時点で2社である。この非対称こそが、日本のステーブルコイン市場における最大のボトルネックだ。

経営層への含意

コインチェックの親会社Coincheck Group N.V.は2024年12月にNASDAQへ上場している。上場企業として、規制対応を完了させたこの登録は明確な事業資産になる。ただし本質は個社の話ではない。登録済み事業者が2社しかない以上、発行体にとっての流通チャネルは希少財であり、その希少性は当面続く。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 制度対応のリードタイムを事業計画に織り込むべきである。提携発表から登録完了まで30か月という実績値は、ステーブルコイン関連事業の収益計上時期を見積もる際の現実的な基準になる。国内トップクラスの暗号資産交換業者ですらこの期間を要した以上、新規参入を前提とした計画は最低でも2年半後ろ倒しで設計すべきである。逆に言えば、既登録2社との提携は、その30か月を買う選択肢として評価できる。
  2. 取扱銘柄の構成が流通の主導権を決める。登録一覧に銘柄が個別記載される構造は、業者間の差別化軸がそのまま可視化されることを意味する。SBI VCトレードが3銘柄、コインチェックが1銘柄という現状は、2026年度に円建て信託型が複数立ち上がる局面で大きく動く可能性が高い。発行体側は、どの取扱業者にどの順序で載せてもらうかを、発行体としての事業計画と同等の優先度で設計する必要がある。
  3. 発行と流通のどちらのライセンスを取るかは、事業モデルの選択そのものである。電子決済手段等取引業の取得に2年半を要する現実を踏まえると、JPYCが選んだ資金移動業型のように発行と流通を一体化する設計は、時間軸において合理的な回避策として機能している。自社発行を志向する事業者は、信託型を選んで既存2社の流通網に依存するか、資金移動業型で自ら顧客接点を持つかを、規制の重さではなく市場投入速度の観点から比較検討すべきである。

【引用:出典】

CoinPost「コインチェック、電子決済手段等取引業登録完了 国内2社目」(2026年8月27日)https://coinpost.jp/?p=733783 金融庁「電子決済手段等取引業者登録一覧」(2026年8月27日現在)https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/denshikessaisyudan.pdf コインチェック株式会社「コインチェック、電子決済手段等取引業登録を完了」(2026年8月27日)https://corporate.coincheck.com/press/l0Ldskhe コインチェック株式会社「米Circle社とコインチェック、日本でのUSDCへのアクセス拡大に向けた提携を発表」(2024年2月27日)https://corporate.coincheck.com/press/TXO5XRuv マネックスグループ株式会社 適時開示「Circle社とコインチェック、日本でのUSDCへのアクセス拡大に向けた提携を発表」(2024年2月27日)https://www.monexgroup.jp/jp/news_release/irnews/auto_20240226542966/pdfFile.pdf JPYC株式会社「日本円ステーブルコイン『JPYC』、シリーズB 1stクローズで総額17.8億円調達へ」(PR TIMES、2026年2月)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000308.000054018.html CRYPTO TIMES「ステーブルコインJPYC発行元が累計60億円を調達、物流大手も出資参画」(2026年8月)https://crypto-times.jp/news-jpyc-funding-60/ CRYPTO TIMES「同じ『1円』でも中身は別物?円ステーブルコインが複線化へ」(2026年8月)https://crypto-times.jp/news-jpy-stablecoin-two-frameworks/ SBI VCトレード「JPYSC|国内唯一の日本円建て信託型ステーブルコイン」https://www.sbivc.co.jp/jpysc CoinPost「金融庁、外国発行ステーブルコインを電子決済手段に正式認定 内閣府令改正を公布」(2026年5月19日)https://coinpost.jp/?p=709645 マネックスグループ株式会社「Coincheck Group N.V.」グループ情報 https://www.monexgroup.jp/jp/group_companies/ccg.html

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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