レポート一覧に戻る
クロスボーダー送金
トークン化預金
金融インフラ
既存金融
法人向け決済
2026年09月28日

外資が先に解いた「日本企業の休日送金」 ― シティのトークン化預金が突く、国内銀行の空白

外資が先に解いた「日本企業の休日送金」 ― シティのトークン化預金が突く、国内銀行の空白

何が始まったか

シティは9月28日、Citi Token Servicesを日本とUAEに拡大したと発表した。日本では米ドル、UAEでは米ドルとユーロの取引に対応する。日本とUAEに口座を持つ顧客は、既存の対応拠点にある自社口座や他の顧客の口座との間で、締め時刻や休日カレンダーの制約なく資金を移動できる。これで対応市場は米国、アイルランド、香港、シンガポール、英国、日本、UAEの7市場になった。同サービスの取引処理額は数十億ドル規模に上る。

仕組み

トークン化預金は、銀行預金をブロックチェーン上で移転できる形にしたものである。シティが管理する許可型ブロックチェーン上で処理されるため、利用企業は暗号資産ウォレットや新たな銀行口座を開く必要がなく、既存の口座とオンラインバンキングから送金を指示できる。テザーのようなステーブルコインとは異なり、裏付けは銀行預金そのものだ。

日本経済新聞は9月9日、同種のサービスを日本企業に提供するのは外資系金融機関として初めてだと報じていた。2025年9月時点で4市場だった展開先は、1年で7市場に増えた。

なぜ日本なのか

シティは日本を、越境資金の流れが大きく、主要な金融センターであるため戦略的に重要な市場と位置づけている。日本の事業会社は、海外子会社への資金移動を時差と休日の制約の中で行ってきた。週末や祝日を挟む支払いに備えて資金を事前に海外へ置く慣行は、資金効率を下げる要因になっている。24時間の即時移動は、この「待機資金」を減らす。

国内銀行との比較

国内でも動きはある。全国約40の銀行が、銀行預金をブロックチェーン上で扱うトークン化預金を使った銀行間決済の実証を進めていると報じられている。ただし実証段階の国内勢に対し、シティは自社ネットワーク内で既に商用運用している。対応通貨が米ドルに限られる点、シティの口座間に閉じる点は制約だが、多国籍企業の財務部門にとっては即効性がある。

構造的な示唆

シティの戦略は、トークン化預金、ステーブルコイン、パブリックチェーンのどれか一つに賭けるのではなく、それらを接続することにあると分析されている。グローバル銀行は自社の拠点網を一つの台帳でつなぐだけで24時間決済を実現できる。複数の銀行間で台帳を共有する必要がある国内勢との差はここにある。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 日本の多国籍企業の財務部門にとって、トークン化預金は「資金の事前配置」を減らすツールになる。CMS(キャッシュマネジメント)の見直しとセットで導入効果を試算すべきである。
  2. 国内銀行は、単独の拠点網を持つグローバル銀行と同じ土俵では戦いにくい。銀行間の相互運用、円建て、地銀ネットワークといった国内固有の強みに焦点を絞る必要がある。
  3. 円建てのトークン化預金がまだ商用化されていない今は、米ドル建ての越境取引から先に需要が顕在化する。外為・貿易関連のサービス事業者は、ドル建てオンチェーン決済との接続を先行して検討する価値がある。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

免責事項

本レポートは、暗号資産および関連市場に関する情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定の暗号資産の購入、売却、保有その他一切の取引行為を推奨・勧誘するものではありません。また、金融商品取引法その他の関連法令に定める投資助言、投資勧誘、または金融商品の販売・媒介に該当するものではなく、税務・法務・会計上の助言を構成するものでもありません。

本レポートに記載された情報は、作成時点において信頼できると判断した情報源に基づいておりますが、その正確性、完全性、最新性、有用性等について当社は何ら保証するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本の毀損その他の損失が生じるリスクを伴います。投資判断は、利用者ご自身の責任と判断において行っていただくものとし、本レポートの利用に起因して生じたいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いかねます。

ブロックチェーン新規事業のご相談

Cabinetでは、アイデア段階からの壁打ち、技術検証(PoC)、そして実装・運用まで一気通貫で伴走する事業開発コンサルティングを提供しています。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

ニュースレターに登録する

本レポートに掲載した内容に加え、業界の最新情報・未公開レポートをメールでお届けします。