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2026年10月20日

金融庁がオンチェーン金融の制度点検を再始動 本丸は「振替制度」とブロックチェーンの接続

金融庁がオンチェーン金融の制度点検を再始動 本丸は「振替制度」とブロックチェーンの接続

2年半ぶりに再開した研究会

同名の研究会は2021年7月に設けられ、2023年11月までに12回開かれました。今回はそれを「新たな第1回」として再開したものです。根拠は、政府が7月21日に策定した「成長投資を促進するための金融戦略」です。9月30日に初会合を開いた「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」のもとで、制度面の環境整備を担う位置づけです。座長は神田秀樹・東京大学名誉教授で、座長を含む15人が委員を務めます。日本暗号資産等取引業協会、日本銀行、財務省がオブザーバーとして加わりました。

事務局が示した5つの論点

事務局は、ステーブルコインと預金のトークン化、セキュリティトークン、DEX・DeFi、振替制度、証券決済の短縮化の5点を論点に挙げ、どの分野を優先すべきかを委員に問いました。資料によると、トークン化資産の世界の累計発行額は2026年7月時点で350億ドル(約5.5兆円)を超えています。2033年には市場規模が18.9兆ドルに達するという試算も紹介されました。

経営上いちばん重いのは振替制度です。株式や社債の権利は振替口座簿への記録で決まる仕組みで、振替機関は国債が日本銀行、それ以外が証券保管振替機構です。国内では、振替口座で管理する国債・社債・投資信託・株式をブロックチェーン上で取引する仕組みはまだ実現していません。事務局は、共通台帳を持つ場合の責任主体と監督、口座管理機関の役割、振替手続を課題として挙げました。米国ではDTCCが2025年にSECからノーアクションレターを受け、トークン化サービスを始めようとしています。一方、日本の現行法ではDTCCのようなトークン化用の一括口座を設けるのは難しい、とも指摘されています。

野村とSecuritizeの提言

野村HDは実務と法制度の課題を10項目示しました。主な内容は、現行の振替法を活かした国債や上場株のオンチェーン化、日銀当座預金と銀行預金をブロックチェーン上の決済手段として使えるようにすること、DeFiとウォレットの規制を海外と同等の自由度にすることです。海外発行ステーブルコインの国内利用で100万円超の保有・移転が制約になっている点の見直しや、記録を信じて取引した人を保護する権利推定・善意取得の法整備も求めました。秘密鍵を管理しないウォレット提供者には過度な規制を課さないよう要望しています。

Securitize Japanは、発行プラットフォーム外に移転できるRWAトークンの時価総額が9月末時点で約390億ドル(約6.1兆円)に達し、過去3年の年平均成長率は195%だと紹介しました。そのうえで、パブリックチェーンを前提とした制度設計と、証券保管振替機構の見直しを含む法整備を提言しました。国際的な互換性を欠く独自路線は時間とコストがかかり、海外との差をさらに広げかねない、とも指摘しています。

DEXは「画面を提供する者」が焦点

DEXについて事務局は、2025年12月の暗号資産制度ワーキング・グループ報告を引用しました。国内居住者向けにDEXへの接続画面を提供する事業者には、リスク説明や本人確認を含むマネロン対策を課すことを念頭に、まず実態を把握する方針です。あわせて、FATFが7月に示した、DeFiの「支配者」の有無で規制対応を3類型に分ける考え方も紹介されました。プロトコルそのものではなく、利用者との接点で規制をかける設計が有力になりつつあります。

2027年初が節目

フォーラムは2027年初に中間整理と官民ロードマップを取りまとめる予定です。投信の紙の受益証券を不要にする投信法改正(DCCが4月に提言)など、個別の法改正の論点もすでに出そろっています。ここからの1年は、業界側の意見がどこまで制度設計に反映されるかが決まる期間です。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 本丸は振替制度とDLTの接続です。共通台帳のもとで振替機関が保有量を直接把握できるようになれば、口座管理機関の付加価値は「記録」から「顧客接点・与信・税務・照会対応」へ移ります。信託銀行と証券会社は、自社がどの層で収益を上げるのかを先に再定義しておく必要があります。
  2. 2027年初のロードマップまでが、ルールに影響を与えられる期間です。実証データと具体的な制度要望(100万円の上限、善意取得、一括口座など)を持ち込む事業者は、制度設計への影響力と先行者の地位を同時に得られます。
  3. DEXへの規制がUI提供者に向かうと、本人確認、リスク説明、取引監視を組み込んだ「規制対応済みのフロントエンド基盤」への需要が生まれます。DeFiの流動性を国内顧客に届けたい金融機関にとって、自前開発か外部基盤の利用かが早期の論点になります。

【引用:出典】

金融庁「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」開催案内(2026年10月20日) https://www.fsa.go.jp/singi/digital_2026/shiryo/20261020.html 金融庁 事務局説明資料 https://www.fsa.go.jp/singi/digital_2026/shiryo/261020/jimukyoku.pdf 野村ホールディングス説明資料 https://www.fsa.go.jp/singi/digital_2026/shiryo/261020/hearing_1.pdf Securitize Japan説明資料 https://www.fsa.go.jp/singi/digital_2026/shiryo/261020/hearing_2.pdf CoinPost「金融庁、DeFi規制の在り方を点検 野村は『海外と同等』求める」 https://coinpost.jp/?p=744022 あたらしい経済「金融庁、オンチェーン金融の制度整備を検討。証券トークン化やDeFiなど」 https://www.neweconomy.jp/posts/619150 JinaCoin「金融庁、DeFi・DEXの研究会を再始動──振替制度も論点に」 https://jinacoin.ne.jp/fsa-defi-dex-token-20261020/ NADA NEWS「金融庁、DeFi・DEX規制を優先検討の候補に」 https://www.nadanews.com/383689/

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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