gumiの「ヨソクヒロバ」が開始5カ月で終了 ― 賭博罪を避けた「完全無料・ポイ活型」予測市場が示した、日本で予測市場が成立しない構造

何が起きたか:予測の新規出題は発表当日に停止
ヨソクヒロバ運営事務局は11月2日に公式Xで、12月18日12時をもってすべてのサービスを終了すると発表した。予測への参加に使うポイント「ヨソポ」の獲得と予測の新規出題は発表当日の11月2日に終了し、既存の予測は各お題の期限まで参加できる。報酬ポイント「ゴールド」の獲得は11月30日12時に終了し、ゴールドの電子マネー等への交換は12月18日12時が期限となる。交換には5,500ゴールド(500円分)以上が必要で、期限までに交換されなかったゴールドは有効期限にかかわらず失効し、払戻しや補償は行われない。12月25日には問い合わせ受付を終了し、法令上保存が必要な情報を除く登録者の個人情報を削除する。終了理由は公表されていない。
どんなサービスだったか:「お金を一切払わない」予測市場
ヨソクヒロバは、政治・経済・スポーツ・エンターテインメントなどの出来事について利用者が結果を予測し、的中精度を競う「完全無料の予測エンタメサービス」として2026年6月9日に開始された。利用者は無料で獲得したヨソポで予測に参加し、的中やランキング入賞で得たゴールドを「えらべるPay」などを通じて電子マネーに交換できる。gumiは3月3日に「予測データサービスの開発を決定」と公表し、初期パートナーとしてGunosyと連携。8月20日にはグノシーiOS版に「ヨソク」タブを設け、会員登録なしで予測に参加できる導線を作っていた。NADA NEWSによれば、gumiは日本で利用者から金銭を集めて予測に賭けさせると賭博罪に当たるおそれがあるため、利用者がお金を一切払わない仕組みにし、法律事務所と検討を重ねたとしていた。gumiはモバイルゲームに加えてブロックチェーン事業を展開しており、初期段階では暗号資産やウォレットを使わずに「日本版予測市場の大衆化」を目指すと報じられていた。
対照的な海外:同じ週に評価額400億ドル
終了発表と同じ週、米国では予測市場の拡大が続いている。あたらしい経済の11月2日のまとめによれば、米予測市場KalshiはシリーズGで10億ドルを調達し評価額は400億ドルに達した。10月30日にはコインベースが予測市場収益の年換算が2億ドル超になったと開示し、NYSEの親会社ICEはTrade[XYZ]と米国で無期限先物市場を構築すると発表している。一方で米ユタ州はKalshiと共同創業者2人を刑事訴追し、欧州の証券規制当局は主要予測市場プラットフォームがEU認可を持たないと指摘するなど、規制との摩擦も強まっている。日本では、金銭を賭ける予測市場は賭博罪との関係で成立が難しく、ヨソクヒロバはその制約の中で設計された「ポイ活」型の実験だった。
構造として読む:無料設計が奪った二つのもの
ヨソクヒロバの設計は、法的リスクを避けた代償として、予測市場が本来持つ二つの機能を失っていた。第一に、価格が情報を集約する機能である。無料ポイントでの予測は損失を伴わないため、参加者が真剣に情報を持ち寄るインセンティブが弱く、予測結果は「世論調査」に近づく。第二に、収益の源泉である。利用者から手数料や証拠金を得られないため、報酬の原資は広告やデータ販売に依存するが、半年では十分な規模に達しなかったと推測される。gumiは終了理由を明らかにしていないが、ゴールド交換の最低額500円という設定と、グノシーへの導線強化の後も終了に至った経緯は、「無料で集客し、別の収益で回収する」モデルの難しさを示している。日本で予測市場を事業化するには、金融商品取引法上のデリバティブや商品先物の枠組みで扱うか、法改正を待つかのいずれかであり、現状では「ポイ活」型でも「金融商品」型でも採算と法制の両立が成立していない。
【事業開発に関するインサイト】
- 規制回避のために機能を削った設計は、その機能が価値の本体である場合に成立しない。予測市場の価値は「損失リスクを負った参加者が価格に情報を込める」ことにあり、無料化はこの核を取り除く。新規事業で法的制約を迂回する際は、迂回によって失われる価値が事業の核心かどうかを最初に判定すべきである。
- 「無料で集客し広告やデータで回収する」モデルは、ニュースアプリとの連携があっても半年では回らなかった。Gunosyという配信先を得ても終了に至った事実は、予測というコンテンツ自体の継続利用率が低いか、データの買い手が未成熟であることを示唆する。類似モデルを検討する企業は、収益化の時間軸を1年以上に置き、その間の報酬原資を確保できるかを先に検証すべきである。
- 日本で予測市場に参入する道は、エンタメ側ではなく金融側にある。海外ではICEやコインベースのような金融インフラが予測市場に接続しており、日本でも金商法のデリバティブ規制下で扱える設計の方が、賭博罪を回避する設計より事業として長続きする可能性が高い。金融機関や取引所は、この領域を「ゲーム会社の実験」としてではなく、自社のデリバティブ商品設計の延長として検討する余地がある。
【引用:出典】
株式会社gumi「完全無料の予測エンタメサービス「ヨソクヒロバ」が本日リリース!」(2026年6月9日) https://gu3.co.jp/news/archives/9211/ 株式会社gumi「gumiの予測エンタメサービス「ヨソクヒロバ」、ニュースアプリ「グノシー」のiOS版で提供開始」(2026年8月20日) https://gu3.co.jp/news/archives/9234/ あたらしい経済「gumi、予測サービス「ヨソクヒロバ」終了へ。開始から約半年で」(2026年11月2日) https://www.neweconomy.jp/posts/623285 gamebiz「gumi、予測エンタメサービス「ヨソクヒロバ」のサービスを2026年12月18日をもって終了」(2026年11月2日) https://gamebiz.jp/news/434964 NADA NEWS「gumiの予測サービス「ヨソクヒロバ」、開始5カ月で終了を発表」(2026年11月2日) https://www.nadanews.com/389271/ NADA NEWS「日本版予測市場は“ポイ活”から広がるか──gumi、無料予測サービス「ヨソクヒロバ」開始」(2026年6月9日) https://www.nadanews.com/354817/ あたらしい経済「【11/2話題】…米予測市場カルシ、シリーズGで1Bドル調達。評価額40Bドルに」(2026年11月2日) https://www.neweconomy.jp/posts/623203 あたらしい経済「【10/30話題】…コインベース、予測市場収益が年換算2億ドル超に/米ユタ州、Kalshiと共同創業者2人を刑事訴追」(2026年10月30日) https://www.neweconomy.jp/posts/622590
石田陽之(いしだあきひさ)
Cabinet株式会社 代表取締役
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