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2026年04月27日

暗号資産は「決済手段」から「金融商品」へ ── 金商法移行で変わる7つの論点と事業者インパクト

暗号資産は「決済手段」から「金融商品」へ ── 金商法移行で変わる7つの論点と事業者インパクト
1. 制度見直しの背景 ── なぜ「いま」金商法なのか

金融庁WG(座長:森下哲朗 上智大学教授)は、見直しの出発点として暗号資産の「投資対象化」の進展を挙げている。WG報告書によれば、2025年10月時点で国内交換業者28社の口座開設数は延べ1,300万口座を超え、利用者預託金残高は5兆円以上に達している Financial Services Agency

。一方で、金融庁の相談窓口には月平均350件以上の暗号資産関連の苦情が寄せられており、詐欺的勧誘の被害が顕在化している。

WG報告書は規制見直しの趣旨について、暗号資産投資にお墨付きを与えるものではないことを明確にしつつ、健全な取引環境を整備すべきだとしている Nikkei

。つまり「促進」ではなく「健全化」が政策意図の核心である。

スケジュール(公的文書ベース)

  • 2025年4月10日:金融庁ディスカッション・ペーパー公表
  • 2025年6月25日:金融担当大臣による金融審議会への諮問
  • 2025年7月~11月:WG審議(全6回)
  • 2025年12月10日:WG最終報告書公表
  • 2026年2月3日:金融審議会総会・金融分科会で答申承認
  • 2026年4月10日:金商法改正案を閣議決定・国会提出
  • 2027年度:施行見込み
  • 2028年1月:分離課税の適用開始(見込み)
2. 制度移行の7つの柱

WG報告書および金融庁の改正法案説明資料に基づく主要論点を整理する。

① 根拠法の移行

改正法案では、暗号資産取引に係る規制を資金決済法から金商法に移管し、有価証券とは異なる金融商品として金商法に位置付ける Financial Services Agency

方針が明示された。NFTやステーブルコイン(電子決済手段)は対象外として整理されている。

② 情報提供規制の創設

発行者には新規販売時のホワイトペーパー的情報の公表、および重要事象発生時の臨時情報・年1回の定期情報の公表が義務付けられる。発行者と利用者の情報の非対称性を解消することが目的である。中央集権的管理者が存在しない暗号資産(ビットコイン等)については、取扱う取引業者が情報提供を担う。

③ 業規制の強化(第一種金商業相当へ)

暗号資産の売買等を業として行う場合、基本的に第一種金融商品取引業に適用される規制と同様の規制を適用すべき Note

とされた。第一種金商業者には、自己資本5,000万円以上、自己資本規制比率120%以上などの財務要件、最良執行義務、分別管理、断定的判断の禁止などが課される。

④ 銀行・保険会社グループでの取扱い

銀行・保険会社本体については、十分なリスク管理態勢を前提に、分散投資の手段としての投資目的保有を解禁。一方、本体での暗号資産を運用対象とする投資運用業は禁止。子会社・兄弟会社では、発行・売買・仲介・投資運用業まで幅広く認められる方向となった。

⑤ 不公正取引規制(インサイダー取引規制の新設)

これまで暗号資産には風説の流布や相場操縦の規制はあったが、インサイダー取引規制は存在しなかった。新制度では、「対象暗号資産」「重要事実」「規制対象者(インサイダー)」という枠組みが整備される。重要事実には、発行者の解散等、取引業者による暗号資産の取扱開始・中止などが含まれ、課徴金制度・証券取引等監視委員会の犯則調査権限も設けられる。

⑥ 無登録業者への罰則強化

無登録業者への罰則は、現行の拘禁刑3年以下から10年以下、罰金300万円以下から1,000万円以下に引き上げられる Nikkei

。裁判所による緊急差止命令、SESCの調査権限も整備される。

⑦ 仲介業・サイバーセキュリティ・自主規制の再編

2025年資金決済法改正で創設された暗号資産サービス仲介業は、金商法上の金融商品仲介業に統合。サイバーセキュリティについては、業界横断的な情報共有・共助の仕組みが求められる。JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)も組織体制の倍増規模での強化が必要となる。

3. 税制改正との連動

令和8年度(2026年度)税制改正大綱では、暗号資産取引について約20%(20.315%)の申告分離課税化と3年間の繰越控除制度の創設が明記された。ただし適用時期は「金商法改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日以後」とされており、施行が2027年であれば2028年1月からの適用となる見込みである。現行の最大55%の総合課税からの転換は、個人投資家にとって極めて大きなインパクトを持つ。

4. 事業者への具体的影響
既存の暗号資産交換業者

名称が「暗号資産取引業者」へ変更され、第一種金商業相当の規律が適用される。コンプライアンス・コスト、内部管理態勢、システム要件、自己資本要件のすべてが大幅に重くなる。最良執行義務との関係で、「取引所」と「販売所」を併設するモデルは見直しを迫られる可能性がある。

暗号資産の発行体(IEO発行者を含む)

ホワイトペーパーの法定化、虚偽記載に対する民事責任・課徴金、年次の継続開示が求められる。スタートアップにとって発行コスト・法務負担は増大するが、発行者が「分権化」したと内閣総理大臣が承認すれば継続開示義務は免除される設計となっている点は注目される。

銀行・証券・保険などの伝統的金融機関

本体での投資目的保有解禁、子会社による発行・運用解禁により、3メガバンク・大手証券会社の参入余地が拡大する。野村ホールディングスや三井住友銀行は既にビットコインETF・ステーブルコイン事業で動きを見せており、金商法移行は機関投資家マネーの流入チャネルを開く。

Web3・DeFi・DEX事業者

DEXについては、技術的性質に合わせた過不足のない規制のあり方について、各国の規制動向を注視しながら継続して検討を行う Note

とされ、即時の規制対象とはならない。ただし利用者がアンホステッド・ウォレットへ移転する場合、取引業者には警告・モニタリング義務が課される。

海外取引所

無登録での日本居住者向け勧誘は、罰則強化と緊急差止命令の対象となる。実質的な国内市場アクセスのハードルが上昇する。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 「規制コスト ≒ 参入障壁」の時代へ:M&A・資本提携が加速する 第一種金商業相当の財務要件・体制整備義務は、中小取引業者にとって自前での維持が困難となる水準である。証券会社・メガバンクとの資本提携、または業界再編によるM&Aが2027年施行に向けて加速する見込みである。逆に、資本力のあるプレイヤーには市場集約のチャンスとなる。
  2. 「金商法移行 × 分離課税」の二段ロケットでTAM(市場規模)が再定義される 規制と税制が同時整備されることで、これまで参入を見合わせていた個人富裕層・機関投資家・年金基金の参入条件が整う。海外で進むビットコインETF・暗号資産ETPの国内提供も視野に入り、現状5兆円超の預託金残高は数倍に拡大する潜在余地がある。資産運用会社・ETF組成会社・カストディアン事業の新規開発機会が生まれる。
  3. 発行体ビジネスは「開示×プロジェクト分権化」の二軸で再設計が必要 新制度では、中央集権的管理者が存在する暗号資産では発行者自身が情報開示責任を負う一方、十分に分権化したプロジェクトでは継続開示義務が免除される設計となる。これは発行体にとって「開示体制を整備するか、徹底的に分権化するか」という戦略的選択を迫るものであり、トークノミクス設計・ガバナンス設計のフェーズから法務・開示戦略を組み込む必要がある。

【出典】

  • 金融庁「金融審議会 暗号資産制度に関するワーキング・グループ 報告」(2025年12月10日)
  • 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月)
  • 日本経済新聞「仮想通貨を『金融商品』に 金商法改正案が閣議決定」(2026年4月10日)
  • 日本経済新聞「仮想通貨を金商法で規制へ、金融庁が報告書」(2025年12月10日)
  • 野村総合研究所「金融審暗号資産WG報告について」大崎貞和(2025年12月18日)
  • 三浦法律事務所「ポイント解説・金商法 #27」(2025年12月25日)
  • 西村あさひ法律事務所「金融審議会 暗号資産制度に関するWG報告 主な概要」(2025年12月)
  • PwC Japan「暗号資産制度改定の方向性とその影響」(2026年1月30日)
  • CoinDesk JAPAN「与党、暗号資産は『分離課税』へ」(2025年12月19日)
監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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本レポートは、暗号資産および関連市場に関する情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定の暗号資産の購入、売却、保有その他一切の取引行為を推奨・勧誘するものではありません。また、金融商品取引法その他の関連法令に定める投資助言、投資勧誘、または金融商品の販売・媒介に該当するものではなく、税務・法務・会計上の助言を構成するものでもありません。

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