「トークン化国債(TJGB)×オンチェーン・レポ」始動 ― Progmat主導の42組織連合がT+0・24/365決済を狙う

主体と全体像
本構想の事務局はProgmat(プログマ、東京・千代田)が務める。Progmatは三菱UFJ信託銀行から派生し2023年10月に独立、3メガなどの出資を受ける独立系インフラ事業者で、国内ST市場で累計発行額シェア64%、利用仲介者10社のトップシェアを持つ。WGの正式名称は「トークン化国債・オンチェーンレポワーキンググループ」で、2026年5月にキックオフ、2026年10月に報告書公表、2026年内にTJGB組成プロジェクト開始というスケジュールが明示されている。
参加組織と座組み
代表(齊藤達哉氏)公開の資料によれば42組織以上が参加する。金融事業者として3メガバンク、東京海上ホールディングス、大和証券、SBI証券、ブラックロック・ジャパン、ステート・ストリート信託銀行が中心。注目すべきはブロックチェーン技術側で、Canton Network(Digital Asset Holdings)、Ava Labs(Avalanche運営)、Datachain、Secured Finance AGといったパブリックチェーン関連事業者が技術選定の中核を担うこと。Secured Financeはすでに外国法域で円建てSCを用いたオンチェーンレポを提供しているレンディングプロトコル企業、Cantonは米国債オンチェーンレポ(2025年8月、Bank of America・Citadel Securities・DTCC等が参加)やDTCの米国債トークン化(2025年12月発表、2026年前半MVP)の採用実績がある。齊藤氏は「日本独自のガラパゴスにならないよう、パブリックチェーン前提で議論を深める」と明言した。
対象市場の規模感
金融安定理事会(FSB)が2026年2月公表のレポートによれば、国債担保のレポ市場は2024年末時点で約16兆ドル(約2,560兆円、1ドル160円換算)、2022年比+20%成長で、日本市場が世界全体の約10%(250兆円超)を占める。日本銀行の2025年8月レポートでは、国内レポ市場は2010年以降取引残高が増加し、特に2022年以降に大幅拡大、非居住者(海外ヘッジファンド等)の円資金運用ニーズが牽引していると指摘されている。
技術スキーム
齊藤代表が公表した初期仮説では、TJGBは「振替国債に紐づく権利のトークン化」が軸。対象国債は国債カストディアン管理下から動かさず、その権利をブロックチェーン上で扱う。決済はステーブルコインで行い、レンディングプロトコルが24時間自動稼働。現行のT+1決済(営業日縛り)を、オンチェーン・レポではT+0・常時化することで、機関投資家にとっての「イントラデイ・アルファ(日中の資金効率)」を最大化し、日跨ぎしないことでバーゼル規制上のリスクウェイト・レバレッジ規制適用を回避できる柔軟性を狙う。法制面では国債登録制度・振替制度・信託ラップ・債権表章のいずれを採るか複数オプションを並行検討する設計。
【事業開発に関するインサイト】
- 「機関投資家のイントラデイ取引」が次のフロンティア:本件の最大の付加価値は「ポジションが日跨ぎしないこと」によるB/S影響回避とバーゼル規制の柔軟運用にある。これは個人向けの不動産STとは構造的に異なる訴求軸であり、ヘッジファンド・銀行ALM・証券ディーリング部門のフロー業務に新しいアルファ機会を開く。日中流動性ソリューション、リアルタイム担保管理、SC↔TJGB変換ゲートウェイなどB2B特化フィンテックに大きな機会領域が出現する。
- 「パブリックチェーン前提」で設計される機関向けインフラは過去20年で初:齊藤代表が明示的にAvalancheやCanton Networkの参加を強調した点は重要である。日本の金融市場インフラは従来、許可型の閉じた構成が原則であった(日銀ネット、ほふり、JPX)が、オンチェーン・レポWGはここを解き放つ可能性がある。米国DTCCがCantonを採用し、欧州Euroclearも同財団の共同議長を務める情勢を踏まえ、グローバル機関マネーが日本市場にアクセスする際の「橋」として位置付けられている。RWA関連プロダクトを構想する事業者は、日本市場参入時にCanton/Avalancheどちらに最適化するかが事業設計の決定変数となる。
- DCC(315社)への加入が日本オンチェーン金融のエコシステム参入条件化:オンチェーン完結型ST WG(2025年)→トークン化株式WG(2025年)→TJGB×オンチェーンレポWG(2026年)と、Progmatは段階的にMMF→株式→国債と機関投資家ポートフォリオの主要資産クラスをオンチェーン化する戦略を着実に進めている。WG参加なくして個別案件の組成・販売は事実上難しい構造になりつつあり、デジタルアセット領域で事業を行う企業は早期のDCC加入と各WGへの主体的関与を経営アジェンダ化する価値がある。米国中間選挙(2026年)の動向次第では米側政策が停滞するリスクもあるが、日本側は2026年通常国会での金商法改正(暗号資産含む)と並走しながら独自の進化軌道を持つ。
【出典】
- 齊藤達哉(Progmat CEO)note「【速攻解説】国債取引を"オンチェーン化"する鍵はなに?」(2026.05.08) https://note.com/tatsu_s123/n/n410ce768db58
- Progmatプレスリリース「『トークン化国債』の『オンチェーン・レポ取引』に関する共同検討開始について」(2026.05.08) https://progmat.co.jp/news/2026-5-8-press/
- 日本経済新聞「日本国債、24時間取引可能に 年内にデジタル証券化」(2026.05.07) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB020LC0S6A500C2000000/
- ビットバンクプラス「日本国債を年内にブロックチェーン上で管理するデジタル証券として発行・流通へ」(2026.05.07) https://bitbank.cc/knowledge/breaking/article/alh7kfxfp
- NADA NEWS「日本も『国債のトークン化』へ、24時間365日取引可能に:日経報道」(2026.05.07) https://www.nadanews.com/347689/
- CRYPTO TIMES「日本国債をブロックチェーン上で取引、メガバンクらが共同検討」(20
石田陽之(いしだあきひさ)
Cabinet株式会社 代表取締役
免責事項
本レポートは、暗号資産および関連市場に関する情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定の暗号資産の購入、売却、保有その他一切の取引行為を推奨・勧誘するものではありません。また、金融商品取引法その他の関連法令に定める投資助言、投資勧誘、または金融商品の販売・媒介に該当するものではなく、税務・法務・会計上の助言を構成するものでもありません。
本レポートに記載された情報は、作成時点において信頼できると判断した情報源に基づいておりますが、その正確性、完全性、最新性、有用性等について当社は何ら保証するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本の毀損その他の損失が生じるリスクを伴います。投資判断は、利用者ご自身の責任と判断において行っていただくものとし、本レポートの利用に起因して生じたいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いかねます。
ブロックチェーン新規事業のご相談
Cabinetでは、アイデア段階からの壁打ち、技術検証(PoC)、そして実装・運用まで一気通貫で伴走する事業開発コンサルティングを提供しています。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
BNY、アブダビで機関投資家向け暗号資産カストディを始動──TradFiとデジタル資産を結ぶ中東ハブ戦略
ブロックチェーンは投機からインフラへ──パラダイムシフトの構造的読解と次の成長フェーズ
ニュースレターに登録する
本レポートに掲載した内容に加え、業界の最新情報・未公開レポートをメールでお届けします。

