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2026年05月15日

CLARITY法案、上院銀行委員会を15対9で突破──米国デジタル資産市場の法的枠組みが現実味、トランプ大統領の独立記念日署名へ最終局面

CLARITY法案、上院銀行委員会を15対9で突破──米国デジタル資産市場の法的枠組みが現実味、トランプ大統領の独立記念日署名へ最終局面

1. 委員会通過の経緯と政治的意義

2026年5月14日午前10時30分(米国東部時間)、上院銀行委員会のティム・スコット委員長(共和党、サウスカロライナ州)が主導する執行会合で、CLARITY法案は4時間以上に及ぶ100件超の修正案審議を経て、15対9という超党派の賛成多数で可決された。共和党全13議員に加え、民主党からはルベン・ガジェゴ議員(アリゾナ州)とアンジェラ・アルソブルックス議員(メリーランド州)の2名が賛成に回った。委員会は共和党13対民主党11の構成であり、共和党単独でも法案通過は可能であったが、最終的に上院本会議で必要となる60票(フィリバスター打破)を見据え、超党派支持の構築が進められた経緯がある。

本法案は2025年7月に下院を294対134の超党派賛成で通過しており、上院では1月に一度マークアップが延期されたほか、コインベース社が2026年1月にステーブルコイン報酬を巡る条項を理由に支持を撤回するなど、4ヶ月以上にわたり停滞していた。今回の通過は、4月にティリス上院議員(共和党、ノースカロライナ州)とアルソブルックス上院議員が成立させたステーブルコイン利回りに関する妥協案が突破口となった。

2. デジタル資産の3区分分類──法案の根幹

CLARITY法案の最大の革新は、デジタル資産を機能に応じて以下の3カテゴリーに分類し、それぞれに異なる規制当局を割り当てた点にある。

第一に「デジタルコモディティ(Digital Commodity)」は、「ブロックチェーンシステムに本質的に紐づき、その価値が当該ブロックチェーンの利用から派生する、あるいは派生することが合理的に期待されるデジタル資産」と定義される。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)が典型例で、これらはCFTC(商品先物取引委員会)の専属管轄下に置かれる。XRPについては、2026年3月にSECとCFTCが共同でデジタルコモディティとして分類していたが、本法案により法的根拠が連邦法に明文化される。

第二に「投資契約資産(Investment Contract Asset)」は、Howey基準に該当する伝統的な証券型トークンで、引き続きSECの管轄に留まる。ただし、本法案は資金調達上限額と開示要件を伴う実質的な登録免除を新設し、デジタル資産プロジェクトの資金調達経路を整備する。

第三に「許可された決済型ステーブルコイン(Permitted Payment Stablecoin)」は、2025年に成立したGENIUS法により別途規制される類型で、CLARITY法案では取引面でSECとCFTCの共同監督対象となる。

3. SEC・CFTC管轄権の明確化と業界への影響

CLARITY法案は、デジタルコモディティの現物・スポット市場におけるCFTCの専属規制権限を新たに付与する。これはCFTCの権限拡大として歴史的意義を持つ。従来CFTCはコモディティのスポット市場に対し反詐欺・反市場操作権限のみを有し、包括的監督権はなかった。本法案下では、デジタルコモディティ取引所(DCE)、デジタルコモディティブローカー、デジタルコモディティディーラーはすべてCFTCに登録する義務を負う。

SECは引き続き、一次市場での発行体・資金調達、投資契約資産の登録・開示、ならびにSEC登録仲介業者によるデジタルコモディティ取引の監督権限を保持する。両機関は施行から270日以内に共同で必要な最終規則を策定するよう義務付けられ、ポートフォリオマージン(証券、スワップ、先物、デジタルコモディティ口座の横断的証拠金算定)に関する共同規則も策定される。

ゲンスラー前SEC委員長時代に展開された「規制による執行(regulation by enforcement)」アプローチに苦しんだコインベース、バイナンス、リップル、クラーケンなどの取引所にとって、本法案は事業の不確実性を根本的に解消する転機となる。

4. ステーブルコイン利回り問題と妥協案

本法案の最大の難所であったステーブルコイン利回り条項については、銀行業界とステーブルコイン発行体・暗号資産取引所の利害が激しく対立した。最終的に成立した妥協案は、「銀行預金における金利または利回りの支払いと経済的または機能的に同等」な、純粋な保有に基づく報酬支払いを禁止する一方、取引、トランザクション処理、ステーキングなどの活動に対する報酬は許容する内容となった。これにより、コインベースやサークル(USDC発行体)などのプラットフォームは、利用者のステーブルコイン残高に対する報酬プログラムを継続できる見通しとなった。

採決前後、サークル株は15%、コインベース株は7%上昇し、市場が本妥協案を歓迎したことが示された。

5. DeFi・開発者保護とアンチCBDC規定

本法案にはRep. トム・エマー議員(共和党、ミネソタ州)が提案してきた「Blockchain Regulatory Certainty Act(BRCA)」の内容が第604条として組み込まれている。これは、顧客資金を管理しないオープンソースのブロックチェーン開発者、ノード運営者、トランザクション検証者が「マネートランスミッター」として分類されることを防ぐ重要な安全策である。これまで連邦当局がマネートランスミッション規制を開発者に対し恣意的に適用してきたグレーゾーンを、初めて明文で解消する。

また、本法案は「Anti-CBDC Surveillance State Act(反CBDC監視国家法)」を併せて短題に含み、第602条で連邦準備銀行が個人向けに中央銀行デジタル通貨(CBDC)を直接発行することを禁止する。トランプ政権の方針と整合した内容である。

セルフカストディウォレットの利用権も明文で保護され、連邦機関による禁止・制限が原則不可となる。一方で、Treasury、SEC、CFTCなど既存当局による不正金融、マネーロンダリング、テロ資金供与、制裁に関する執行権限は維持される。

6. 残された関門──倫理条項、農業委員会との統合、本会議採決

委員会通過後も、本法案が大統領執務机に届くまでには複数のハードルが残る。第一に、上院農業委員会で別途承認された類似法案との一本化作業が必要である。第二に、トランプ大統領一族の暗号資産事業(World Liberty Financialなど)からの収益が政治倫理上問題視されており、民主党は閣僚・大統領を対象とする倫理条項の挿入を強く要求している。ホワイトハウス顧問のパトリック・ウィット氏は2026年5月のConsensus Miamiで、大統領を狙い撃ちにする条項は容認しないと明言する一方、「大統領からインターンまで全員」に適用される横断的ルールには応じる姿勢を示した。

第三に、上院本会議でフィリバスター打破に必要な60票の確保が課題となる。2025年に成立したGENIUS法は68対30で通過したことから、超党派支持の前例はある。Galaxy Digital社は2026年内に法律として成立する確率を55%と推定し、予測市場Polymarketも委員会通過直前で62%の確率を示した。推進派は7月4日のトランプ大統領による独立記念日署名を目標としているが、議会のメモリアルデー休会(5月21日開始)を考慮すると、スケジュールは非常にタイトである。シンシア・ルミス上院議員(共和党、ワイオミング州)は、この機会を逃せば成立は2030年まで遅延する可能性があると警告している。

7. 市場反応と機関投資家への含意

委員会通過の報を受け、ビットコインは81,000ドルを回復した。Citi社のアナリストはCLARITY法案成立を前提に、2026年のビットコイン基準シナリオ目標を143,000ドルと設定し、現物ビットコインETFへの追加流入額を150億ドルと予測している。スタンダードチャータード銀行は同様にイーサリアムの2026年目標を7,500ドルと設定し、XRPについては法案成立シナリオ下で40〜80億ドルのETF流入を見込んでいる。

トークン化米国債の市場規模は2026年5月時点で153.5億ドルの過去最高に達しており、伝統金融とデジタル資産の融合が加速する基盤が整いつつある。

【事業開発に関するインサイト】

1. CFTC管轄シフトを前提とした米国市場参入戦略の再設計 日本やアジアの暗号資産企業にとって、米国市場へのアクセス経路がCFTC登録(デジタルコモディティ取引所・ブローカー・ディーラー)を中心とした体系に移行する点は重大な戦略転換を意味する。SECの「規制による執行」リスクが大幅に低減することで、日本のSBI VCトレードや東京拠点のWeb3企業は、米国子会社設立や米国パートナーとの提携を再検討する好機にある。施行から270日の規則策定期間中に、早期にCFTCのデジタルコモディティブローカー・ディーラー登録を準備する企業が先行者利益を獲得する公算が大きい。

2. ステーブルコイン報酬モデルの設計余地拡大とJPY建てステーブルコインへの示唆 「保有に対する利息相当の支払いは禁止、活動に対する報酬は許容」という二重構造は、日本円ステーブルコイン(JPYC、Progmat Coin等)の海外展開戦略にも応用可能なテンプレートを提示する。取引高、流動性供給、決済利用などの「アクティビティ」を報酬対象とするインセンティブ設計は、ユーザー獲得とコンプライアンスを両立する新たな事業モデルとなる。サークル株が15%上昇した市場反応は、報酬付きステーブルコインビジネスの収益性に対する投資家の期待を示している。

3. オープンソース・DeFi開発者の米国拠点回帰と日本の競争環境への影響 BRCAの組み込みにより、米国がオープンソース開発者・ノード運営者にとって法的に安全な拠点となれば、これまでシンガポール、UAE、スイスなどに流出していた開発人材が米国に回帰する可能性が高い。日本は2023年以降、暗号資産の税制改正やステーブルコイン法制で先行したものの、Web3開発者の絶対数では米国に劣後している。日本企業は、米国の規制明確化を待たずに、JBA(日本ブロックチェーン協会)等と連携した開発者誘致策、法人向けの自己保管ウォレット保護の明文化、DAO法制の整備など、対抗的な政策提言を加速する必要がある。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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