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2026年05月18日

イラン、ビットコイン決済の海上保険「ホルムズセーフ」始動──制裁回避と100億ドル収益化を狙う国家プロジェクト

イラン、ビットコイン決済の海上保険「ホルムズセーフ」始動──制裁回避と100億ドル収益化を狙う国家プロジェクト

概要:国家主導の暗号資産保険プラットフォーム

2026年5月16日、革命防衛隊(IRGC)系のファルス通信が、イラン経済財務省内部文書を基に「ホルムズセーフ」の開設を初報した。同プラットフォームはホルムズ海峡およびペルシャ湾を航行する商用船舶に対し、海上保険証券と財務責任証明書を発行する。保険料はビットコイン(BTC)およびその他の暗号資産で支払われ、ブロックチェーン上で決済が確認された瞬間に補償が発効する仕組みである。公式サイトhormuzsafe.irは「ブロックチェーンの速度で決済される、検証可能なデジタル保険」を提供すると謳う。Bloombergも18日付で同件を報じている。

戦略的背景:SWIFT回避と海峡の収益化

ホルムズ海峡は世界の海上原油取引の約20%が通過する戦略的要衝である。従来、この航路の海上保険はロイズ・オブ・ロンドン系シンジケートやP&Iクラブが米ドル建てで引き受けてきたが、制裁下にあるイランはこの仕組みから排除されてきた。ホルムズセーフはオンチェーン決済により、SWIFTおよび西側コルレス銀行を完全に迂回する設計である。背景には、IRGCが2026年3月施行の「ホルムズ海峡管理計画」に基づき、通航船舶から原油1バレル当たり1ドル(満載タンカーで最大200万ドル)の通行料を徴収してきた経緯があり、保険サービスはその収益化スキームの延長線上に位置づけられる。イラン政府は年間100億ドル超の歳入を見込んでいる。

リスク:国際的な有効性と二次制裁

最大の障壁は国際的な認知である。ロッテルダムやシンガポールなど主要港湾で、イラン国家機関発行の保険証券が現地当局に受理されない可能性が高い。米国は2026年4月末、約5億ドル相当のイラン関連暗号資産を凍結しており、ホルムズセーフを利用する船主・荷主・港湾当局は二次制裁の対象となるリスクを抱える。戦争被害は補償対象外とされており、業界専門家からは「ビットコイン決済は支払摩擦を減らすが、引受、再保険、クレーム検証など保険業務の本質的構成要素を代替するものではない」との指摘も出ている。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 国家主導のオンチェーン金融インフラ構築という新フェーズ:これまで暗号資産による制裁回避は個別取引レベルにとどまっていたが、ホルムズセーフは保険引受・決済・証券発行までを統合したオンチェーン代替金融インフラを国家が構築する初の本格事例である。今後、他の制裁対象国・地域においても、同様の業種別・用途別ブロックチェーン金融サービスが派生する可能性が高い。
  2. ビットコインの「決済レイヤー」としての実需用途の拡大:投機資産としての側面が強調されがちなビットコインだが、本件は国際貿易の実需領域(海上保険・通行料)への組み込みを示す象徴的事例である。日本企業にとっては、暗号資産が貿易金融のサブレイヤーとして機能し始めるシナリオを前提に、コンプライアンス体制と取引先審査の高度化が急務となる。
  3. コンプライアンス・テック市場の拡大機会:オンチェーン取引が国家制裁回避ツールとして本格運用されることで、ブロックチェーン分析・トラベルルール対応・サンクションスクリーニングといったレグテック領域の需要が一段と高まる。特に海運・損害保険・商社など実体経済を担うセクターにおいて、暗号資産経路の取引可視化サービスは事業機会として急成長する見通しである。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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