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Fireside Crypto
2026年07月26日

140社超が支える「共有型」ステーブルコイン——Open USD(OUSD)が塗り替える通貨インフラの新常識

140社超が支える「共有型」ステーブルコイン——Open USD(OUSD)が塗り替える通貨インフラの新常識

なぜ今、「共有型」モデルなのか

これまでのステーブルコインは、TetherのUSDTやCircleのUSDCのように単一の発行体が準備金(多くは短期米国債)の運用益をほぼ独占する構造だった。流通量を増やして価値を生むのは決済事業者や取引所・ウォレットだが、その経済的果実は発行体の貸借対照表に積み上がる——この「インセンティブのねじれ」が、企業による大規模利用を阻む一因とされてきた。OUSDはこの前提を反転させ、収益を「持ち込んだ側」に返す設計を掲げる。

仕組み:手数料ゼロ・収益還元・合議制ガバナンス

OUSDは3つの設計原則を掲げる。第一に、参加企業は数量上限なし・手数料ゼロで発行(ミント)と償還(リディーム)ができる。第二に、準備金運用益の大半を(少額の運営手数料を除き)普及に貢献する参加企業へ還元する。第三に、発行体は独立企業「Open Standard」が担い、意思決定は特定企業ではなく参加企業で構成する取締役会が全体利益の観点から行う。準備金は米国規制に準拠して大手金融機関で管理されるとするが、具体的な受託機関や監査(アテステーション)の枠組みは発表時点で未開示だ。暫定CEOにはBridge共同創業者のザック・エイブラムス氏(Bridgeは2025年にStripeが約11億ドルで買収)が就く。OUSDはブロックチェーン非依存を掲げ、Base・Ethereum・Solana・Polygon・Stellar・Tempoなど複数チェーン上での稼働が報じられている(媒体により記載に差)。StripeはOUSDを法人向け標準ステーブルコインに据える方針、CoinbaseはBase等での提供を年内に予定する。

日本勢の参画と市場の反応

日本からはPayPay、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、楽天グループが名を連ねた。一方、国内3メガ共同の円建てステーブルコイン構想を主導する三菱UFJ(MUFG)はOUSDのリストには見当たらない。発表当日、USDC発行体Circle(CRCL)の株価は一時17%超下落し、終値62.63ドルと約4か月ぶりの安値を付けた(FTSE Russellの指数除外も重なり、直近30日で約40%下落)。CircleのアレアCEOはUSDCの信頼性と流通網の優位を主張して反論。TetherのアルドイノCEOは「ようこそOUSD、プレイヤー2が参戦した」と余裕を見せた。

将来像と論点

ステーブルコイン市場は3,000億ドル超(USDT約1,450億ドル、USDC約730億ドル)に達し、2030年に1.5兆〜4兆ドル規模へ拡大するとの試算もある。巨大な成長余地が、競合企業を「共通標準」へ束ねる原動力だ。ただし、収益共有型のコンソーシアムはPaxos主導のUSDG(Global Dollar Network)が先行するもシェア拡大に苦戦しており、かつてのLibra/Diem(Facebook主導、規制圧力で頓挫)との相似を指摘する声も多い。「ロゴを並べるのは簡単、企業行動やビジネスモデルを変えるのは難しい」との批判もあり、実行力(アライメント維持・受託体制・規制ライセンス)が最大の試金石となる。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 日本の金融・決済大手(みずほ・SMBC・楽天・PayPay)はドル建てグローバル決済網としてOUSDに参画する一方、国内では3メガ共同の円建てステーブルコイン(MUFGのProgmat基盤)が並走する。「ドル=越境・共通」「円=国内・実取引」の二層構造が現実味を帯びており、自社の資金移動を両レールでどう最適配分するかが検討課題となる。OUSD名簿にMUFGが不在である点は、国内勢の戦略分岐を示唆する。
  2. 競争軸が「トークンの保有」から「流通ネットワークの構築」へ移行しつつある。OUSDでは準備金収益が普及貢献企業へ還元されるため、決済事業者・プラットフォーム・ウォレット・DeFiは「単なる配布チャネル」から「収益を共有するステークホルダー」へと立場が変わる。自社をどの層(発行連携・受入決済・払出・エージェント決済)で組み込むかが、新たな収益源設計の起点になる。
  3. 一方で実行リスクは高く、準備金の受託機関・監査体制が未開示、Coinbaseのように既存USDC収益との利益相反を抱える参加者も存在し、2026年8月のCoinbase=Circle配布契約更新も控える。深いシステム統合の前に、まずは低コストで接続可能な「オプション」として確保し、ガバナンス・受託・規制ライセンスの具体化を見極める段階的アプローチが妥当だ。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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