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2026年07月04日

地方創生×Web3の現在地――350件超に拡大した施策と、いま問われる「成果とのバランス」

地方創生×Web3の現在地――350件超に拡大した施策と、いま問われる「成果とのバランス」

政策の追い風:Web3は「国策」の一部になった

日本の地方創生×Web3は、政府方針に明確に位置づけられた点で世界的にも特異な発展を遂げている。2025年6月13日に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」は5本柱の一つに「デジタル・新技術の徹底活用」を掲げ、NFTを含むWeb3.0の最大限活用を明記した。同時期のデジタル社会重点計画も、NFT等のトークンで地理的制約を超えて地域資源の潜在価値を引き出す方針と、ウォレット環境整備等の基準づくりを打ち出している。交付金による後押しが見込まれることから、2025年以降、自治体側の参入インセンティブは構造的に強まっている。

施策の広がり:14件から350件超へ、しかし浸透率は限定的

ガイアックスの調査では、Web3活用の地方創生プロジェクトは2022年4月の14件から2023年4月に111件へ約8倍に増加した。その後も拡大は続き、2024年に200件超、2025年5月時点では350件超に達したとされる。類型は、ふるさと納税返礼品NFT、デジタル住民票NFT、地域DAO、周遊促進のブロックチェーン活用など多岐にわたる。ただし2023年時点で導入自治体は全国1,718市町村の約6%にとどまっており、件数の伸びの割に面的な浸透は進んでいない。2026年に入ってからは、茨城県石岡市のNFT会員証(市内約50店舗の特典連携)や佐賀県唐津市・伊万里市とJR九州による周遊データのブロックチェーン記録など、投機色を排し「会員証・データ基盤」として使う実務的な設計へ重心が移っている。

成果の実像:先行事例が示す効果と限界

代表事例である新潟県長岡市山古志地域の「Nishikigoi NFT」は、2021年12月の発行以降、発行総数約3,000、デジタル村民は1,600人超(2023年9月時点)と実人口約800人の2倍に達した。初期売上41.4ETH、二次流通込みの総取引量は82ETH、第1・2弾売上は約1,500万円(1ETH=35万円換算)で、売上の約3割を村民投票で選定したプロジェクト予算に充当する独自ガバナンスも実装した。ホルダーの約3割が実際に現地を訪問し、移住者も生まれている。山形県西川町のデジタル住民票NFTでは、保有者の来訪が累計約1,915人(2024年9月末、事業者公表値)と誘客効果が報告されている。あるやうむのふるさと納税NFT(CNPコラボ)は222種のNFTに1,710件の寄付を集め、購入者の3〜5%が現地を訪れた。

施策と成果のバランス:目標と実績の乖離

一方で冷静な検証も必要だ。山古志が掲げた「デジタル村民10,000人」の目標に対し、実績は約2年で1,600人台にとどまる。運営主体自身が「長期的に村の存続へどの程度寄与するかはまだ分からない」と認め、リアル住民とデジタル村民の融合の難しさにも言及している。第一生命経済研究所は「NFTは全てを叶える魔法ではない」とし、販売して終わりではなく関係維持の施策を考え続ける必要性を指摘する。コミュニティ運営には専任数名規模のコミットメントが求められ、体制のない自治体では「発行後に停滞」するリスクが高い。件数の急増は、成功の証明ではなく試行の増加と読むべき段階にある。

ユーザーの反応:共感購入という新しい行動様式

ユーザー側の反応には注目すべき変化がある。山古志の第1弾セールでは購入者の約40%がNFT初購入者で、投機ではなく「地方に関わりたいが方法が分からなかった」層の受け皿となった。デジタル村民が初訪問時に「ただいま」と口にする現象や、Jリーグ・アビスパ福岡のDAOが約半年で1,000人超、2025年1月に約6,700人へ拡大した事例は、トークンが帰属意識の装置として機能し得ることを示す。他方、参加者の熱量維持は運営の仕掛けに依存し、静観層が多数を占めるのが実態であり、共感の初速を持続的関与へ転換できるかが成否を分けている。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 地方創生2.0の交付金を背景に自治体のWeb3調達は今後2〜3年拡大が見込まれるが、発注側は「発行実績」から「来訪者数・関係人口のKPI達成」へ評価軸を移しつつある。効果測定基盤(来訪ログのオンチェーン記録等)を組み込んだ提案が受注競争力を持つ。
  2. 成功事例の共通項は「NFT販売」ではなく「専任のコミュニティ運営体制」にある。ツール提供型より、運営人材の供給・伴走(地域おこし協力隊DAO型)を含むサービス設計の方が継続収益と解約耐性の両面で優位。
  3. 2026年の潮流は投機性の排除と実用化(会員証、周遊データ記録、調査のDAO化)であり、暗号資産ウォレット不要のUXが標準になりつつある。金融機関・鉄道等の非Web3企業との連携枠組みが参入の現実的な入口となる。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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