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2026年07月10日

SBIも出資した「オンチェーン信用ネットワーク」Morphoとは何か——貸付の土台と運用を分離した新しい金融インフラの仕組み

SBIも出資した「オンチェーン信用ネットワーク」Morphoとは何か——貸付の土台と運用を分離した新しい金融インフラの仕組み

Morphoとは:貸し借りの「市場」を誰でも作れるインフラ

Morphoは2021年にフランスのPaul Frambot氏らが創業した、ブロックチェーン上の貸付・借入プロトコルだ。銀行のように一つの組織が融資審査を行うのではなく、暗号資産を担保にした貸し借りの市場をプログラムで自動運営する。特徴は、AaveやCompoundといった先行プロトコルが採る「全員の資金を一つの大きなプールで混ぜる」方式ではなく、貸付市場を一つずつ独立させた点にある。担保資産・貸付資産・担保掛目・価格参照方法を指定すれば、誰でも許可なく専用の貸付市場を作れる。土台となるスマートコントラクト「Morpho Blue」は約650行という最小限のコードで書かれ、後から改変できない設計のため、ある市場で問題が起きても他の市場に波及しにくい。

二層構造:土台(Blue)と運用(Vault)の分離

一般利用者が個別市場を選ぶのは難しいため、その上に「Vault(ボールト)」という運用層がある。利用者はUSDCなどを預けるだけでよく、「キュレーター」と呼ばれる第三者のリスク運用専門会社(Gauntlet、Steakhouse Financialなど)が、複数の市場に資金を自動配分して利回りを最適化する。投資信託の運用会社に近い役割だが、決定的に異なるのはキュレーターが顧客資産を預からない(カストディを持たない)ことだ。彼らが操作できるのは配分ロジックのみで、預け入れ・引き出しの権限は常に利用者側にある。つまりMorphoは「貸付インフラ」と「運用戦略」を別のレイヤーに分離し、インフラは誰にでも開放しつつ、運用は複数の専門家が競争する構造を作った。

ビジネスモデル:プロトコル本体は「無料」、稼ぐのはキュレーター

意外なことに、Morphoのプロトコル本体は現在手数料を取っていない。借り手が払う金利は貸し手に渡り、キュレーターがそこから成功報酬(利回りの最大50%、実際は数%〜15%程度)や管理報酬(Vault V2で最大5%)を受け取る。プロトコル発の手数料は累計2.5億ドル超発生しているが、借入金利の最大25%を徴収できる「フィースイッチ」は意図的にオフのままで、成長への再投資を優先する方針だ。運営面では、開発会社Morpho Labsは2025年にフランスの非営利団体Morpho Associationの傘下に入り、MORPHOトークンはガバナンス(意思決定投票)機能に特化している。今回の1.75億ドル調達もトークン購入の形で行われ、投資家は市場価格ベースで取得した点が異例だ。

実需と数字:Coinbaseの裏側で動く「見えない金融インフラ」

Morphoの強みは実利用にある。Coinbaseのビットコイン担保USDCローンはMorphoを基盤とし、2026年4月時点で累計21.7億ドルを組成、英国にも展開した。Kraken、Anchorage Digital、Galaxy Digital、さらに米大手運用会社Apolloの機関投資家向けVaultも稼働する。総預入額は約110億〜130億ドル、アクティブローンは約45億ドル、年換算手数料は約1.92億ドル(DefiLlama、2026年6月初旬)に達する。SBIの北尾会長は出資に際し「効率的で透明性の高いオンチェーンクレジット市場の確立」を掲げており、信託型円ステーブルコインJPYSCやOndoとの資産トークン化提携と並ぶ、オンチェーン金融布陣の一角と位置づけられる。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 「B2Bの黒子インフラ」戦略が機関採用の鍵:Morphoは自社ブランドの消費者アプリではなく、Coinbase等の既存プレイヤーに貸付機能を提供するバックエンドとして拡大した。日本の金融機関・フィンテックにとっても、DeFiを自社UIの裏側に組み込む「ホワイトラベル型」導入が、規制対応と顧客接点維持を両立する現実的な参入形態となる。
  2. キュレーター(リスク運用者)という新職能の勃興:インフラと運用の分離により、資産を預からずに配分戦略で収益を得る新しい事業カテゴリーが生まれた。上位5社が市場の約43%を占め、各社13〜19億ドルを運用する。日本の運用会社・信託銀行がこの領域で「日本品質のリスク管理」を武器に参入する余地は大きい。
  3. JPYSCとの接続が国内ユースケースの試金石:SBIはMorpho出資と同時期に円ステーブルコインJPYSCの発行を進めており、将来的に「円建て資産を担保にJPYSCを借りる」オンチェーン貸付市場の構築が構想として自然に接続する。制度面(貸金業法・資金決済法との整理)を先行検討する事業者が優位に立つ。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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