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2026年07月03日

ウォレットは次世代スーパーアプリの本命か──PayPay・LINE・auの3陣営が競う「暗号資産の入口」

ウォレットは次世代スーパーアプリの本命か──PayPay・LINE・auの3陣営が競う「暗号資産の入口」

3大経済圏が同時にウォレットへ参入

登壇したのは、au Coincheck Digital Assets代表取締役社長の笠井道彦氏、PayPay金融戦略本部副本部長の神宮司有樹氏、LINE NEXT日本事業リーダーの李眞榮氏。3社はそれぞれ、日本を代表する生活インフラの上にウォレットを載せようとしている。

au Coincheck Digital AssetsはKDDI(出資比率50.1%)、コインチェック(40.0%)、auフィナンシャルホールディングス(9.9%)の合弁会社で、2026年夏に会員約3,967万人の「au PAY」内ミニアプリとしてノンカストディアルウォレットを提供予定。PayPayは2025年10月にBinance Japanへ40%出資し持分法適用会社化、7,000万人超のユーザー基盤と暗号資産取引の接続を進める。LINE NEXTはLINE上のステーブルコインウォレット「Unifi」を2026年3月に正式ローンチし、5月22日の日本円ステーブルコイン「JPYC」対応から約1カ月で国内JPYC流通量No.1を達成。6月22日にはLINEミニアプリ版「Unifi mini」も投入した。

「保管」から「日常利用」へ──共通するUX思想

笠井氏は、ステーブルコイン活用や現実資産のトークン化が進めば、ウォレットは保管先ではなく日常の取引・決済を支える接点になると指摘。利用者に「ウォレットを使っている」と意識させず、送金の速さや手間の削減としてサービスの裏側に溶け込ませる設計思想を示した。神宮司氏は、暗号資産の入出金にまつわる「自分のお金はどこに行ったのか」という怖さの解消を最優先課題とし、即時反映のシンプルな体験を志向する。一方で、決済アプリ上にリスク資産を載せることには「エンジンとブレーキのバランス」が必要と慎重姿勢も示した。李氏は、価格変動の大きい暗号資産ではなく、円連動のJPYCを決済・送金・リワードの日常通貨として据える戦略を明確にした。

AIエージェント時代の決済インフラという視点

議論のもう一つの軸はAIエージェントだ。笠井氏は、AIに銀行口座情報を渡すことは難しく、ウォレット×ステーブルコインがAI取引の決済手段として注目されると説明。神宮司氏もAIによる取引は「目先の話」と準備の必要性を強調した。李氏は、AIが裏側で資産運用や処理を担っても、利用者がLINE上の慣れた動作で承認し「自分が意思決定している」と感じられるUXが重要とした。責任分界や承認設計は今後の課題として残る。

海外プラットフォームとの競争軸は「ローカル体験」

Xが6月25日に米国で法定通貨ベースの「X Money」を開始するなど、海外勢の動きも加速する。笠井氏は金融・決済には規制・加盟店網・商習慣などローカル要素が強く残り、日本国内で全体の体験を設計できる部分に競争余地があると分析。神宮司氏は「実家のおじいちゃんおばあちゃんが安心して使えるサービス」という水準の信頼と自然な日本語UXを、李氏はポイント・リワード文化を起点としたパートナーエコシステムを、それぞれ差別化の軸に挙げた。

【事業開発に関するインサイト】

  1. ウォレットの覇権争いは「新規アプリ」ではなく「既存経済圏へのミニアプリ組み込み」で決着に向かう。 au PAY、LINE、PayPayとも数千万人規模の既存接点にウォレットを溶け込ませる戦略で一致しており、Web3事業者は単独アプリでの獲得競争より、大手経済圏への組み込みパートナーシップ(ウォレットSDK、ミニアプリ対応、JPYC等のリワード連携)を優先すべき局面にある。
  2. AIエージェント決済は「ウォレット×ステーブルコイン」を前提に設計が始まっている。 銀行口座情報をAIに渡せない以上、権限を限定できるウォレットが AI取引の標準口座になる可能性が高い。エージェント向けの承認UX、責任分界、利用限度額設計は未整備の空白地帯であり、先行して標準を作るプレイヤーに事業機会がある。
  3. 海外大手に対する日本勢の防衛線は「規制対応×加盟店網×文化的UX」の統合設計にある。 X MoneyやMetaMaskのようなグローバル勢に対し、単機能では勝負にならないが、ポイント文化、日本語UX、国内規制準拠、加盟店との関係を束ねた「体験全体」の設計は国内勢に優位性が残る。B2B支援事業者にとっては、この統合を担うインテグレーション需要が拡大する。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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