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2026年07月01日

DeFi起業家がCEXのトップへ──Binance Japan新代表・豊崎亜里紗氏が号砲を鳴らす「成長フェーズ」の中身

DeFi起業家がCEXのトップへ──Binance Japan新代表・豊崎亜里紗氏が号砲を鳴らす「成長フェーズ」の中身

「基盤の4年間」から経営のバトンタッチ

Binance Japanは6月30日、経営体制の刷新を発表し、7月1日付で豊崎亜里紗氏が新ゼネラルマネージャーに就任した。前代表の千野剛司氏は退任後も名誉会長兼取締役として取締役会に残り、移行期間中の戦略的助言を続ける。

千野氏の約4年間は、2022年11月のサクラエクスチェンジビットコイン買収に始まり、2023年8月のBinance Japanサービス開始、国内最多となる66銘柄の取扱い、Simple Earnの拡充、そして2025年10月のPayPayとの資本業務提携(PayPayがBinance Japanへ40%出資)と、外資系交換業者が日本の規制下で定着するための土台づくりに費やされた。千野氏自身は会見で「基盤を作ることができた4年間だった」と総括する一方、「グローバルでのBinanceの存在感からすると、日本の事業サイズは満足できる状態ではない」と成長余地を率直に認めた。

新代表の経歴──金融工学×ビッグテック×DeFiの三刀流

豊崎氏は米ノースウェスタン大学でコンピュータサイエンスと経済学を専攻し、UBS証券香港でデリバティブトレーダー、Google日本法人で検索・AR事業を担当。2022年にオンチェーン仕組債を手掛けるDeFiプロジェクト「Cega」を共同創業し、2025年に事業売却した。Forbes 30 Under 30にも選出された、伝統金融・テクノロジー・暗号資産の3領域を横断する経歴の持ち主だ。

成長戦略の柱は①信頼の基盤、②PayPay協業、③新製品展開の3点。規制当局・ユーザー・パートナーとの信頼を最優先としつつ、世界最多水準のBinanceのプロダクト群から「日本市場に適したもの」を選んで展開する方針を示した。

「質の高いユーザー」=取引量ではなく裾野の拡大

会見で豊崎氏が繰り返した「質の高いユーザーの獲得」という言葉は、大口トレーダーの獲得を意味しない。NISAの普及やインフレ環境を背景に金融商品への関心を高める層が増えているとの認識のもと、暗号資産・ブロックチェーンの教育と、初心者でも使いやすい製品開発に注力するという。国内の暗号資産口座数は約1,400万にとどまっており、既存トレーダーの奪い合いではなく、未参入の投資家層を市場ごと広げる戦略だ。

DeFiは「当面予定なし」──あえてCEXを選んだ理由

DeFi出身の新代表がBinance JapanでDeFi型サービスを積極展開するとの見方に対し、豊崎氏は「DeFiサービスを展開することは当分ありません」と明言。法令順守と規制当局との関係を最重要とし、ライセンスに準拠したサービス展開を優先する。

キャリアチェンジの理由について同氏は、ブロックチェーン啓発活動を続ける中で「この技術を広めるには、まだワンステップ前の話が必要だ」と感じたと説明。大きなプラットフォームだからこそ、商品理解や安全な使い方を多くの人に伝えられ、そこから技術の社会実装につなげられる──DeFiの理想を規制市場の実務に落とし込む「回り道」を、あえて選んだ格好だ。

技術への深い理解とGoogleで培ったプロダクト・成長戦略の知見が、PayPay経済圏との接続という強力な流通チャネルの上でどう機能するか。豊崎体制の真価が問われる。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 経営トップの「フェーズ交代人事」は事業ステージの明確なシグナルである。 規制対応・ライセンス取得を担う「守りの経営者」から、プロダクト・マーケティング出身の「攻めの経営者」への交代は、Binance Japanが規制リスク管理から市場シェア獲得へ経営資源を振り向ける転換点を示す。取引所との協業を検討する事業者にとって、パートナーシップ提案の受け入れ余地が広がるタイミングと読める。
  2. 成長戦略の中核は「暗号資産の外側」にいる投資家層の取り込みである。 NISA世代・インフレ対策層という伝統的投資家を教育とUXで暗号資産に誘導するアプローチは、約1,400万口座にとどまる国内市場の構造的な拡大余地を狙うもの。金融教育コンテンツ、初心者向けUX設計、証券・決済との接続領域に、B2Bの事業機会が集中する。
  3. 「DeFi人材のCEX登用」は、規制市場におけるWeb3人材戦略の新しい型を示す。 DeFiの技術理解を持つ人材が規制準拠の中央集権型ビジネスを率いる構図は、将来の規制緩和時にオンチェーン型サービスへ即応できる組織能力の仕込みでもある。日本企業がWeb3参入時の経営人材を検討する際、「規制対応経験」と「オンチェーン技術理解」の両輪を備えた人材の希少価値は今後さらに高まる。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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