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2026年07月17日

予測市場は「次世代のリスク移転インフラ」になるか——Limitless CEOが描く日本参入シナリオ

予測市場は「次世代のリスク移転インフラ」になるか——Limitless CEOが描く日本参入シナリオ

慈善活動とAIエージェント構想から生まれた予測市場

Limitlessの創業経緯は異色だ。Hetherington氏は2023年当時ウクライナに在住し、戦争を受けた非営利の資金調達で1,000万ドル(約15億円)の人道支援金を集め、その過程で後の共同創業者らと出会った。共同創業者チームは、100カ国以上でアプリストア1位を獲得しダウンロード累計3億件に達した生成AIアプリ「Reface」の開発陣である。「自律型AIエージェント群が情報の真偽を競い合って判定する経済システム」という構想の実現基盤として予測市場に着目したのが原点だが、時期尚早と判断し、まず消費者向けプロダクトとして事業化した。

月間取引高10億ドル規模へ、CFTC審査下の米国戦略

Limitlessは2025年10月のローンチ後、月間取引高を約1億ドルから2026年4月には約16.6億ドルへと急拡大させた(Dune Analytics調べ)。セッションでは、ウォッシュトレード(不正な水増し取引)を自主的に検知・除外する運用を採り、フィルタリング後の先月取引高は約6億ドルと明かした。競合のPolymarketやKalshiが月間40〜50億ドル規模で先行する中、透明性を差別化要素とする姿勢がうかがえる。米国では2026年5月1日付でCFTC(商品先物取引委員会)にDCM(指定契約市場)認可を申請し、180日間の審査下にある。認可後はリテールではなく、機関投資家向けのヘッジ・リスク移転商品に注力する方針だ。

日本市場:OTCデリバティブの代替という切り口

日本参入について同氏は「まだ参入しておらず、まずLimitless Researchによる分析・教育事業から」と慎重だが、狙いは明確だ。金利スワップやCDSといった従来型リスク移転商品は、価格付けが複雑で相対(OTC)取引が中心のため、バックオフィスコストや仲介依存が大きい。二値の予測市場なら、既存市場で対応できないポートフォリオの隙間をシンプルにヘッジできるという主張である。参入手法としては規制サンドボックスや業界コンソーシアムによるPoCを想定する。また、日本のギャンブル規制との関係では「胴元(ハウス)が存在せず期待値が負でない」「運ではなく知識・スキルを試すピア・ツー・ピア市場」という2点で本質的に異なると整理した。円建てステーブルコインの登場についても、国債需要の創出とオンランプ改善の観点から肯定的に評価している。

経営層への示唆

予測市場は米国で「DeFiプロダクト」から「規制対象デリバティブ」へと位置づけが移行しつつあり、Bernstein向け説明では機関投資家向けリスク移転市場の規模を米スポーツベッティング(年間60〜100億ドル)の約10倍と試算している。日本の金融機関・事業会社にとっては、規制明確化の進展次第で、保険的デリバティブという新商品カテゴリーが立ち上がる可能性を注視すべき局面にある。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 「ギャンブル規制との峻別ロジック」が日本参入の鍵:ハウス不在・スキルベースというLimitlessの整理は、日本の賭博罪・金商法の枠組みで予測市場を制度設計する際の論点そのものであり、規制当局との対話やロビイングに関与できる事業者・団体には先行者利益が生じうる。
  2. 機関投資家向け「リスク移転」市場は未開拓の大型カテゴリー:消費者向け予測アプリではなく、OTCデリバティブの簡素な代替としてのB2B予測市場は、日本の銀行・保険・商社のヘッジニーズと親和性が高く、サンドボックスやコンソーシアム型PoCの共同組成が現実的な入口となる。
  3. 円ステーブルコインとの相乗効果:予測市場の決済レイヤーとしてステーブルコインが機能すれば、国内で立ち上がりつつある円建てステーブルコインの実需ユースケースとなり、発行体・チェーン事業者・予測市場運営者の三者連携によるエコシステム構築余地がある。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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