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2026年07月14日

暗号資産の金商法移管、成立直前の攻防——「サナエトークン」批判と全会一致の附帯決議14項目が示す制度の死角

暗号資産の金商法移管、成立直前の攻防——「サナエトークン」批判と全会一致の附帯決議14項目が示す制度の死角

何が決まったのか:暗号資産は「有価証券とは別の金融商品」へ

改正法の核心は、これまで資金決済法上の「支払い手段」だった暗号資産を、金商法上の「金融商品」として位置づけ直した点にある。ただし株式と同じ有価証券になるわけではなく、有価証券とは別カテゴリーとして性質に応じた規制を適用する建て付けだ。主な新設規制は、暗号資産初となるインサイダー取引規制(上場・上場廃止・新規事業などの未公表重要情報を用いた売買の禁止)、IEO等における発行者の基本情報公表義務、個人投資家保護のための投資上限の設定である。周辺整備として、無登録販売への罰則が拘禁刑3年以下から10年以下へ大幅に強化され、対価を得た銘柄推奨への表示義務(ステルスマーケティング規制)やレンディングの規制対象化も盛り込まれた。業者の呼称も「暗号資産交換業者」から「暗号資産取引業者」に変わる。施行は公布から原則1年以内で、2027年中の新制度移行が見込まれる。焦点の申告分離課税(約20%)は施行日の属する年の翌年1月1日以後の取引から適用される仕組みで、2027年度施行なら2028年1月開始となる。

反対討論が突いた「規制の空白」:ミームコインとDEX

採決に先立つ討論では、日本共産党の小池晃議員が反対を表明した。同氏は暗号資産を「価値の裏付けがない投機」とした上で、「サナエトークン」のようなミームコインやDEXに規制が及ばないまま金商法移管や分離課税化を進めることは「国による事実上のお墨付きになりかねない」と批判。プロ向け投資家(特定投資家)の対象拡大が一般投資家をリスクに巻き込む懸念も指摘した。賛否は分かれたものの、この指摘は業界関係者も認識する制度の死角——発行者が特定できないトークンや、国境をまたぐ分散型プロトコルへの規制執行の困難さ——を国会の場で明文化したものと言える。

全会一致の附帯決議14項目:法律が書かなかったことのリスト

注目すべきは、与野党共同提案の附帯決議14項目が全会一致で採択されたことだ。暗号資産関連の主な内容は、(1)金商法移管や分離課税化が国の「お墨付き」ではないことの国民への周知と金融リテラシー向上、(2)価値の裏付けがない特性を踏まえ、自主規制団体と連携したガイドライン整備による適正な取引環境づくり、(3)金融庁と警察庁の連携強化、証券取引等監視委員会のシステム・人員増強による無登録業者対策と監視強化、(4)施行後5年を待たない迅速な制度見直し、である。片山さつき財務大臣は「政府として配慮していく」と応じた。附帯決議に法的拘束力はないが、金融庁が今後起草する政令・内閣府令や自主規制団体(JVCEA)のルール整備の方向性を先取りする文書として実務上の重みを持つ。

2028年へのタイムライン

今後の流れは、2027年中とみられる施行に向けた細則整備、業者の登録移行、そして施行翌年からの分離課税適用(最速2028年1月)と続く。暗号資産ETFの解禁も本改正を前提に制度整備が進む見通しで、日本の暗号資産市場は「決済の延長」から「株式・投信に近い監督下の投資市場」へと段階的に移行していく。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 附帯決議は「次の規制」の予告編として読む:ミームコイン・DEX・無登録業者対策・5年を待たない見直しという附帯決議の論点は、施行後に追加規制が入る候補領域そのものだ。これらの領域で事業を検討する企業は、附帯決議を前提としたコンプライアンス設計を先行させることで、後追い対応のコストと信用リスクを回避できる。
  2. 「取引業者」への移行期は提携・再編の好機:第一種金商業相当の規律への移行は、中小の交換業者にとってシステム・体制投資の負担増を意味する。金商業のノウハウを持つ証券会社と暗号資産事業者の提携・買収が加速する公算が大きく、体制構築支援やコンプライアンス・テックにも商機が生まれる。
  3. インサイダー規制は上場(取扱い開始)情報の管理体制を一変させる:上場・廃止情報が規制対象となることで、発行体・取引所・マーケティング会社の間の情報管理契約や公表プロセスの標準化が必須となる。IR支援・情報管理ツール・法務サービスなど、株式市場で成熟した周辺産業の暗号資産版を先行構築するプレイヤーが有利になる。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

免責事項

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