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2026年10月03日

3,200万人の思い出は資産になるか ― サイワールド3.0の「Web3復活劇」が問う、データ復元とトークンの優先順位

3,200万人の思い出は資産になるか ― サイワールド3.0の「Web3復活劇」が問う、データ復元とトークンの優先順位

何が発表されたか

シグマチェーンは8月10日、ソウルで記者会見を開き、サイワールドの知的財産(IP)ライセンスを取得したと発表した。10月にベータ版を公開し、2027年上半期の正式サービス開始を目指すという。ベータ版では友人連携とフィード機能を先行提供し、過去のアカウントや写真を確認するための本人認証も用意する。

対象は会員3,200万人の写真や投稿など約170億件、3.8ペタバイトのデータで、外注せず自社人材で復元するとしている。

「Web3」の中身

収益モデルとして、利用者が望めばミニホームページのコンテンツをNFT化できる機能を検討している。かつてのサイバーマネー「ドトリ」の購入手段に、金融機関が発行するステーブルコインを連携させる案も示した。収益は利用者40%、クリエイター40%、プラットフォーム20%で分配するという。

ただし代表は、過去の関連コインで利用者被害が出たことを踏まえ、ベータ版には独自のコインやトークンを連動させないと明言している。つまり「Web3」はあくまで将来の選択肢という位置づけである。

残る三つの疑問

第一に資金。長期運営に必要な資金規模は開示されていない。第二に権利。前運営会社の代表は買収手続きの適法性を争っており、代表ドメイン「cyworld.com」も譲渡されていない。第三に技術力。同社が2019年に登録したブロックチェーン関連特許は、登録料の未納で消滅している。また、同社が掲げる毎秒30万トランザクションという性能は、認定試験機関が試験成績書を発行したものの、認定機関が直接認証したものではないと報じられている。

構造的な問い:資産化より先に「返す」べきもの

ユーザーが求めているのは、まず自分の写真や日記を取り戻すことだ。前運営会社の代表も、新たな収益モデルより3.8PBのデータ復元を優先すべきだと反論している。データ主権を掲げるWeb3の理念に照らせば、NFT化はデータを返した「後」の選択肢であるべきで、順序を誤れば「思い出の換金」と受け取られかねない。

日本への示唆

日本でも、サービス終了したSNSやゲームのデータ、IPを引き継いで「再生」させる事業は増えている。サイワールドの事例は、休眠IPの再活用でブロックチェーンが価値を持つのは、ユーザーへのデータ返還と権利関係の整理が済んだ後だという順序を示している。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 休眠IPの再生では「データ返還→コミュニティ再建→収益化」の順序を崩さないこと。NFTやトークンは最後に置くことで、規制リスクと評判リスクの両方を下げられる。
  2. 権利の連鎖(IP、ドメイン、データ)を事前に一本化できない案件は、技術がいかに優れていても事業化が止まる。デューデリジェンスの第一項目は法務である。
  3. 独自トークンを発行せず外部のステーブルコインを決済手段に使う設計は、日本でも「前払式支払手段や電子決済手段を外部調達する」モデルとして応用できる。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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