証券会社がDEXの「入口」になる ― SMBC日興がUniswap v4のフックで作る、規制を埋め込んだ流動性プール

何が発表されたか
SMBC日興証券とブロックチェーン開発企業のNethermindは10月2日、Uniswap Labs、Base、Nyx Foundationの3者と協業の覚書を締結した。目的は、日本の投資家が法令・規制上の要件に対応した形でDeFiを利用できる環境をつくることである。流動性供給プロトコルと独自の流動性プール「DeFi Gateway」を開発する。
役割分担も示されている。Baseはデプロイとx402の統合を支援し、Nethermindはエンジニアリング、AI、スマートコントラクトのセキュリティを主導する。開発の進捗は金融庁と共有されるが、現時点で承認された製品や稼働中のサービスはない。
技術の核心:フック
Uniswap v4の「フック」は、流動性プールに独自の処理や条件を追加できる機能である。本件では、このフックにマネーロンダリング・テロ資金供与対策と投資家保護の仕組みを組み込む。つまり、取引所の外で本人確認をして入口を絞るのではなく、プール自体が「誰が取引できるか」を判定する設計だ。プールごとに日本の規制要件に合わせて構築できるのが特徴になる。
加えて、投資判断を支援または代行するAI活用の「エージェント型ボールト」も開発する。ステーブルコインやRWA(現実資産)の流動性戦略も探索対象に含まれている。
1年がかりの布石
SMBC日興は2月に暗号資産やステーブルコインを使った事業開発を担う「DeFiテクノロジー部」を新設した。3月6日にはNethermindと共同で、国内投資家が自動マーケットメーカー(AMM)への流動性提供を通じてオンチェーン金融に参加する構想を公表している。今回は、その構想を実装段階に進めた形だ。
構造的な意味
従来、規制金融機関のDeFi参入は「許可型の別チェーン」か「パブリックチェーン上の閉じたアプリ」に分かれていた。フック方式は、パブリックな流動性インフラ(Uniswap・Base)を使いながら、規制要件をプール単位で実装する第三の道である。成功すれば、日本の投資家はグローバルな流動性にアクセスしつつ、国内ルールの保護を受けられる。
一方で課題も多い。金融庁の承認は未取得で、プールへの流動性供給が金融商品取引法上どう位置づけられるかは整理が必要だ。AIボールトが投資判断を「代行」する場合は、投資運用業や助言業の規制との関係も問われる。
【事業開発に関するインサイト】
- 規制対応を「入口のKYC」から「プールのロジック」へ移す設計は、ST(セキュリティトークン)やステーブルコインの二次流通にも応用できる。発行体や取引業者は、フック型コンプライアンスの技術検証を始める価値がある。
- 大手証券がパブリックDeFiの上に規制レイヤーを作ることは、日本のオンチェーン金融で「チェーンを持たない仲介者」という新しいポジションが生まれることを意味する。インフラより仲介機能で差別化する戦略が現実味を帯びる。
- x402やAIボールトの組み込みは、AIエージェントが投資家として振る舞う時代の制度論点を先取りしている。金融機関は、エージェント取引の責任分界と監督報告の設計を早期に検討すべきである。
【引用:出典】
- CoinPost「SMBC日興証券、国内投資家向けDeFi基盤を開発へ Uniswap v4活用」https://coinpost.jp/?p=740788
- あたらしい経済「SMBC日興証券、国内投資家向けDeFi基盤開発へ」https://www.neweconomy.jp/posts/613214
- NADA NEWS「SMBC日興、国内投資家向けDeFi基盤を開発へ──Uniswap・Baseらと協業」https://www.nadanews.com/370589/
- CRYPTO TIMES「SMBC日興、ユニスワップと協業で『規制対応DeFi』開発へ」https://crypto-times.jp/news-smbc-nikko-defi-gateway/
- The Defiant「SMBC Nikko and Nethermind Plan Compliance Hooks for Uniswap Pools」https://thedefiant.io/news/defi/smbc-nikko-and-nethermind-plan-compliance-hooks-for-uniswap-pools
- Finwire「SMBC Nikko plans Japan DeFi gateway with Uniswap」https://finwire.io/news/crypto-news/smbc-nikko-plans-japan-defi-gateway-with-uniswap
石田陽之(いしだあきひさ)
Cabinet株式会社 代表取締役
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