QRで払い、裏でステーブルコインが精算する ― SBIデジトラストの日韓実証が狙う「見えない越境決済」

何が発表されたか
SBIホールディングス傘下のSBIデジトラストは10月1日、韓国のNICE情報通信、DSRVとの共同検証を発表した。3社は9月30日、ソウル・永登浦区のNICE情報通信本社で基本合意書を締結している。検証は2026年12月末までの完了を目指す。
想定するユースケースは、日本から韓国を訪れた旅行者がNICE情報通信の加盟店でQRコードを使って支払う場面である。利用者から加盟店までの資金移動、送金・決済の指示方法、各社システムの接続方法を具体化し、想定取引規模やコストも確認する。
役割分担
SBIデジトラストは日本の規制や決済制度、デジタル資産の知見を生かし、SBIグループ各社と連携して送金・決済スキームを開発・具体化する。NICE情報通信は韓国全国の約120万の加盟店を支援しており、加盟店決済の運用方法や既存システムとの接続、事業性を検討する。DSRVはブロックチェーンの技術要件やシステム構成を担う。使うステーブルコインの種類や基盤チェーンは明らかにされていない。
「送れる」だけでは商用化できない
この検証の特徴は、技術的な送金可否より、既存の金融・決済システムとの接続、実店舗での運用、取引規模とコストを含めた事業性の確認に重心を置いている点だ。SBIデジトラストによれば、韓国ではステーブルコインに関する制度整備が途上にあり、議論が続いている。制度が固まる前に運用面の論点を洗い出しておくことは、制度設計への提言力にもなる。
文脈:日韓の決済回廊
SBIグループは8月にも、SBI Digital Practiceと韓国Nodeinfraが、カントンネットワークで日韓を結ぶ越境決済ネットワークの開発に合意している。当初は円とウォンのテストトークンを使い、規制されたステーブルコインはその後に導入する計画だ。同じ週にはPayPayが訪日外国人の暗号資産決済を始めている。日韓の間で、旅行者決済を入口にしたオンチェーン精算網の構築が並行して進んでいる。
日本への示唆
利用者から見れば、韓国でもQRで支払うだけで、ステーブルコインは見えない。消費者に暗号資産を意識させず、事業者間の精算効率だけを上げる「見えない越境決済」は、日本発のインバウンド・アウトバウンド双方で応用できる。
【事業開発に関するインサイト】
- 越境決済のステーブルコイン活用は、消費者向けより加盟店精算などのB2Bレイヤーから実装が進む。決済代行・アクワイアラーは、精算コストと着金スピードの比較検証を始めるべきである。
- 制度整備前の実証は、運用課題のデータを持つことで規制当局への提言力になる。日本企業は、整備途上の海外市場でこそ早期参画の価値がある。
- 日韓は旅行者数が多く、QR決済の普及度も高い。ステーブルコイン精算の「最初の商用回廊」になりうるため、観光・小売・交通事業者は二国間の決済戦略を見直す時期に来ている。
【引用:出典】
- NADA NEWS「SBI、日韓ステーブルコイン決済の商用化へ共同検証」https://www.nadanews.com/370441/
- CoinPost「SBIデジトラスト、日韓間ステーブルコイン送金で共同検証へ」https://coinpost.jp/?p=740531
- DXマガジン「日本人旅行者が韓国でステーブルコイン決済?SBIデジトラストなど3社が商用化へ共同検証」https://dxmagazine.jp/news/ytoda2640-28/
- JinaCoin(wacoca転載)「日本人旅行者が韓国でステーブルコイン払いへ、SBIらが共同検証」https://www.wacoca.com/news/2945897/
- DigitalToday「DSRV, Nice Information and SBI to test Korea-Japan stablecoin payments」https://www.digitaltoday.co.kr/en/view/109620/
- crypto.news「Lloyds uses USDC to settle $750,000 with Visa in under an hour」(SBI Digital Practice×Nodeinfraの言及)https://crypto.news/lloyds-uses-usdc-to-settle-750000-with-visa-in-under-an-hour/
石田陽之(いしだあきひさ)
Cabinet株式会社 代表取締役
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