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2026年09月30日

約定するまで見えない注文 ― Baseの「Cobalt」アップグレードが変える、取引の執行とトークン化資産のコンプライアンス

約定するまで見えない注文 ― Baseの「Cobalt」アップグレードが変える、取引の執行とトークン化資産のコンプライアンス

何が変わったか

Baseは9月30日、Cobaltハードフォークをメインネットで有効化した。9月23日からテストネット(Sepolia)で稼働していたものだ。2026年のアップグレードとしては、5月の「Azul」、6月の「Beryl」に続く3回目となる。

Validity Transactions:条件付きで初めて約定する取引

目玉は「Validity Transactions」である。署名済みの取引を、残高・ストレージ・ブロック番号・Flashblockの順番といったオンチェーン条件が一致したときにだけブロックに含める仕組みだ。条件付きのスワップや引き出しなど、状態に依存する操作が可能になる。Baseは、ブロック生成のたびに取引を保持して条件を評価し、ブロックに含まれるまで取引を非公開に保てるとしている。

これは、トレーダーにとってはフロントランニング(MEV)への耐性を高める仕組みになる。条件を満たさない取引はチェーンに載らないため、無駄なガス代も発生しない。

B20:発行体のための三つの機能

B20は、6月のBerylで導入された、ステーブルコインなどの資産をプロトコルレベルで発行するための規格である。Cobaltでは三つの機能が加わった。一つ目の「Composite Policies」は、本人確認と適格投資家確認など複数のコンプライアンスチェックを、同じ資産に組み合わせて適用できる。二つ目の「Schedule Multiplier Updates」は、ERC-8056に準拠し、株式分割などに対応する倍率変更を予約できる。三つ目の「seizeWithMemo」は、オンチェーンに記録を残しながら資産を移転する機能である。

背景には、コインベースが9月25日に、アップル、エヌビディア、メタ、アルファベットの株式を表すB20トークンとして米国株のトークン化をBase上で開始したことがある。

今後の計画

Baseは今後数カ月で、ブロック時間を2秒から200ミリ秒に短縮すること、プロトコルレベルでのネイティブなスマートアカウント、ガス代のスポンサー、取引の一括処理を導入すること、イーサリアムの次期アップグレード「Glamsterdam」のEVM改善の一部を取り込むことを計画している。

日本への示唆

日本のSTは、ibetやERC-3643系のように、アプリケーション層で移転制限や強制移転を実装してきた。BaseはこれをL2のプロトコル標準として持ち始めている。差押えや相続に対応する強制移転の記録(seizeWithMemo)や、複数の適格性チェックの合成は、日本の金融商品取引法の実務要件とも重なる。パブリックL2がこうした「発行体の道具箱」を標準装備すれば、国内STのチェーン選定の前提が変わる。

【事業開発に関するインサイト】

  1. トークン化資産の発行体の管理機能(移転制限、強制移転、倍率調整)は、アプリケーション層からL2のプロトコル層へ移りつつある。国内のST発行体・プラットフォーマーは、独自実装の維持コストとL2標準の採用を比較検討すべきである。
  2. 条件付き取引の標準化は、DEXやDeFiで機関投資家の執行品質を高める。証券会社や運用会社は、MEV対策を前提にしたオンチェーン執行ポリシーを策定する必要がある。
  3. 200ミリ秒のブロック時間と、ガス代スポンサー・一括処理の導入が実現すれば、決済や会員サービスなど非金融アプリのUXは大きく改善する。事業会社は、どのL2を基盤に選ぶかを技術ロードマップで比較する時期に来ている。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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