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2026年09月30日

日本人だけが使えない暗号資産決済 ― PayPay×バイナンスが開いた「インバウンド起点」の規制の抜け道

日本人だけが使えない暗号資産決済 ― PayPay×バイナンスが開いた「インバウンド起点」の規制の抜け道

何が始まったか

バイナンスは9月30日、対象となる海外のBinance Payユーザーが、訪日中にPayPay加盟店で暗号資産決済を行えるようになったと発表した。対象は100以上の国・地域の約4,800万人で、加盟店は引き続き日本円で精算を受ける。PayPay側の発表によれば、利用できるのは全国1,000万カ所以上の加盟店・対応カ所である。

接続には、TBCASoftが開発した越境決済の相互接続フレームワーク「HIVEX」が使われた。HIVEXは、各参加者が自らのガバナンスとコンプライアンス体制を維持したまま、決済エコシステム同士をつなぐ連合型の仕組みである。決済時のガス代は不要で、開始記念として期間限定の10%即時割引も実施される。

誰が使えないのか

この機能は日本を訪れている対象ユーザーにのみ表示され、日本居住者とBinance Japanの利用者は対象外である。PayPayは2025年にBinance Japanの株式40%を取得している。グループとしては国内向けの暗号資産事業を持ちながら、決済では訪日客に限定するという線引きをしたことになる。

構造:国内規制の外で受け入れ、国内で円に戻す

加盟店から見れば、受け取るのは日本円であり、暗号資産を保有する必要はない。暗号資産の売却と円転は国外のBinance側とHIVEXの精算網の中で完結し、日本の加盟店網は「QRコードを読まれる場所」として使われる。報道によれば決済にはUSDTが使われる。国内では交換業や電子決済手段の規制が厳格だが、この構造は利用者を国外居住者に限ることで国内制度との衝突を避けている。

PayPayにとっては、海外の決済サービス連携の延長線上にある。9月には銀聯(UnionPay)アプリとの連携も始めており、PayPay加盟店で使える海外決済サービスは17の国・地域の36サービスになった。暗号資産ウォレットも、それらと同列の「訪日客が普段使う決済アプリ」の一つとして扱われたわけだ。

需要の規模

2025年の訪日外国人は4,270万人。2026年1〜8月は2,760万人で、前年同期比2.7%減と報じられている。暗号資産決済の比率は未知数だが、USDTを日常的に使う新興国の旅行者には、両替や国際カード手数料を避ける手段になりうる。

日本への示唆

同じ週、KDDIはau PAYアプリ内に国内居住者向けの暗号資産ウォレットを開始した。国内向けは前払式支払手段へ変換し、訪日向けは国外で円転する。二つの設計の違いは、日本の規制が暗号資産決済を「誰に」許しているかを映している。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 暗号資産決済の国内展開は、まずインバウンド向けから始める方が規制上の摩擦が小さい。小売・宿泊・交通事業者は、既存のQR決済網経由で追加の開発なしに受け入れられる。
  2. HIVEXのような連合型の相互接続レイヤーは、各国ウォレットと国内加盟店をつなぐ「ハブ」になる。決済事業者は自社でウォレットを作るより接続ハブを押さえる方が効率的な場合がある。
  3. 国内居住者向けの暗号資産決済は、前払式支払手段やステーブルコインを介した別設計が必要になる。インバウンドと国内の二系統を前提にした事業計画を立てるべきである。

【引用:出典】

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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