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2026年10月05日

Startale Japan「ステーブルコイン普及債」――利払い・償還をJPYSCで行う年5%・9,990万円のデジタル社債が示す、決済レイヤーと資産レイヤーの分離

Startale Japan「ステーブルコイン普及債」――利払い・償還をJPYSCで行う年5%・9,990万円のデジタル社債が示す、決済レイヤーと資産レイヤーの分離

商品の骨格

Startale Japanは2026年10月5日、東京・赤坂で記者発表会を開き、「第1回保証付デジタル社債」の自己募集を発表した。発行予定額は9,990万円(約63万ドル、1ドル=約158円換算)、1口10万円、期間1年、利率は税引前年5.00%の固定。申込期間は10月6日から11月10日、払込期限は11月26日、発行日は12月1日、利払日は2027年6月1日と12月1日で、後者が償還日を兼ねる。シンガポールの親会社Startale Group Pte. Ltd.が元利金と遅延損害金を保証する。発行・管理基盤には、SBIホールディングスの持分法適用会社であるデジタル証券株式会社のシステム子会社、オーナーシップ社の「OwnerShip Bond」が採用され、発表会ではHyperledger Fabric上で発行されると説明された。募集・販売は発行体自身が行い、オーナーシップ社は勧誘・販売に関与しない。

JPYSCは「出口」だけに使われる

投資家は円の現金で払い込み、利息と元本はStartale App上でJPYSCとして受け取る。JPYSCはSBI新生信託銀行が発行する第3号電子決済手段(信託型)で、2026年6月24日にSBI VCトレード口座内に限定して提供が始まった。発表会時点の累計発行額は約270億円(約1.7億ドル)とされる。ただし外部ウォレットへの移転は、信託受益権の移転に伴う税務上の報告義務などが未解決のため現在も認められていない。金融庁は令和9年度税制改正要望でこの点の見直しを求めており、渡辺創太CEOは2027年4月頃の改善を個人的見通しとして示した。公式募集ページは、Startale AppでJPYSCを受領できない場合には円の銀行振込で支払うと明記している。つまり本債のJPYSC払いは、制度整備を前提とした「優先的な支払経路」であり、確定した決済方式ではない。

5%の経済合理性(分析)

1年物国債利回りは10月7日時点で約1.615%、ソフトバンクグループが9月に発行した個人向け7年債は4.75%である。無名の非上場発行体による1年債として5%は高水準だが、年間利払いは最大約500万円(約3.2万ドル)にとどまる。渡辺CEOは目的を資金調達ではなく「オンチェーン金融に適した法制度や先進事例をつくること」と述べ、資金使途もJPYSCの普及・事業開発が中心である。したがって国債対比の超過利回り約3.4%分、金額にして約340万円は、JPYSC保有者を獲得するための販促費と解するのが整合的である。発行額が1億円未満に収まっているのは、非上場ゆえの判断と説明されたが、少額募集として有価証券届出書の提出を要しない水準に合わせた可能性が高い。

比較事例と残る論点

国内では野村総合研究所が2025年3月に30億円のデジタル債で銀行振込連動のDVP決済を実現し、2026年3月にはSBI証券・大和証券などがトークン化預金DCJPYによるST二次流通のDVP実証を行った。海外ではSiemensが2024年9月に3億ユーロ・1年のデジタル債を中央銀行マネー連動で決済している。これらがいずれも機関投資家間の決済効率を狙ったのに対し、本件は個人向け小口の利払い経路にステーブルコインを当てる点で方向が異なる。一方で、社債台帳(Hyperledger Fabric)とJPYSC(イーサリアム)が別台帳であるため、原子的な同時決済は成立せず、発行体による照合が残る。また本債は原則として譲渡・中途換金ができず、発行体・保証人とも財務情報の開示は限定的である。投資家は信用リスクと流動性の欠如を5%の対価として受け入れることになる。

【事業開発に関するインサイト】

  1. 本件の本質は資金調達ではなく、ステーブルコインの「受け取り手」を作る顧客獲得施策である。銀行・証券は、自社トークン化預金やステーブルコインの普及において、利払い・ポイント・配当など「既に顧客に支払っている資金」の受け渡し経路をトークンに切り替えることで、新規購入を求めずに保有者を増やす設計を検討できる。
  2. 社債台帳と決済トークンが別チェーンにある限り、DVPや自動利払いの効率は限定的で、円の銀行振込というフォールバックが常に必要になる。トークン化債券を企画する金融機関は、資産側と決済側の台帳接続(同一基盤、ブリッジ、または信頼できる照合主体)を最初の設計要件として置くべきである。
  3. 信託型ステーブルコインの外部流通は税制上の報告義務に律速されており、2027年4月が一つの分岐点となる。それまでの期間は、閉じた口座内・アプリ内での利用実績を積む準備期間と捉え、税制改正の帰結に応じた外部ウォレット対応、受領者の本人確認、税務報告の実務フローを先行して整備しておくことが競争上の優位につながる。

【引用:出典】

Startale Japanが「ステーブルコイン普及債」発表、JPYSCで利払い・償還へ(あたらしい経済) — https://www.neweconomy.jp/posts/613631 「OwnerShip Bond」、Startale Japanの自己募集型デジタル社債の発行・管理基盤に採用(PR TIMES) — https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000152795.html ステーブルコイン普及債 公式募集ページ(Startale) — https://startale.com/bond Startale Japan 第1回保証付デジタル社債に関する報道(CoinPost) — https://coinpost.jp/?p=741084 SBI VCトレード・Startale Japan登壇セッション JPYSCレンディング(CoinPost) — https://coinpost.jp/?p=741156 日本初「ステーブルコイン社債」は本当に安心か?(ビジネスジャーナル) — https://biz-journal.jp/company/post_396214.html SBIグループおよびStartale Groupによる、国内初の信託型円建てステーブルコイン「JPYSC」の提供開始に関するお知らせ(PR TIMES) — https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000114522.html デジタル証券とSBIホールディングスの資本業務提携(CoinPost) — https://coinpost.jp/?p=696993 ソフトバンクグループ 第70回無担保普通社債の条件決定 — https://group.softbank/news/press/20260904 国債利回り一覧(stock-marketdata.com) — https://stock-marketdata.com/jgb.html 野村総合研究所 デジタル債のDVP決済(野村ホールディングス) — https://www.nomuraholdings.com/jp/news/nr/news20250314.html DCJPYを用いたST二次流通のDVP決済検証(SBI新生銀行) — https://corp.sbishinseibank.co.jp/ja/news/news/20260424a/main/01/link/260424_STCsecondary_j.pdf Siemens Issues Digital Bond Settled With CBDC(Markets Media) — https://marketsmedia.com/siemens-issues-digital-bond-settled-with-cbdc 為替相場 10月7日(熊本日日新聞) — https://kumanichi.com/articles/2043950

監修

石田陽之(いしだあきひさ)

Cabinet株式会社 代表取締役

2017年より、一貫してトークンやNFTの活用、ブロックチェーンゲームの企画・開発、NFTを活用した事業開発に従事。大手エンタメ上場企業を始め、80件以上のブロックチェーンプロダクトに対し事業責任者や設計、PM、アドバイザー等、様々な立場でブロックチェーン関連の事業開発に関わってきた。2021年よりCabinet株式会社を創業。

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