Pudgy Penguins運営のイーサリアムL2「Abstract」が12月15日に停止へ トークンを発行しない撤退判断と、チェーンの終了で移行の責任を負うのは誰か

発表の概要と停止スケジュール
Abstractは2026年10月6日(米国時間、日本時間7日)にX上で運営終了を発表した。停止日は2026年12月15日で、それまでに資産をブリッジで外へ移さなければ、その資産にはアクセスできなくなると告知している。移行手段として、公式の「Migration Hub」、ネイティブブリッジ(引き出しまで約3時間)、外部ブリッジのStargate、Relay、Jumperが案内された。同時に、移行サイトを装った偽サイトや運営になりすましたDMへの注意も呼びかけている。Abstractは2025年1月にメインネットを公開しており、稼働期間は2年に満たない。
撤退の理由とトークンを発行しないという判断
運営側は、消費者向けクリプトだけに特化したチェーンは単独では事業として成り立たないと説明した。理由として挙げたのは、DeFiの層が薄いこと、流動性の不足、機関投資家の参加が乏しいこと、競合より予算が小さいことの4点である。Igloo CEOのNetz氏によれば、同社は約18カ月にわたりAbstractに資金を出し続け、2年間の損失は「数千万ドル」(1ドル158円換算で数十億円規模)にのぼった。独自トークンの発行やICOも検討したが、需要の裏付けがないトークンでは問題は解決しないとして見送っている。今後はPudgy PenguinsのIP事業、NFT、PENGUトークンに経営資源を集中する。IglooはAbstract構築のため、2024年7月にFounders Fund主導で1,100万ドル超(約17億円)を調達していた。
実績値は媒体によって食い違う
公表された実績値は報道ごとに定義が異なる。The Blockやあたらしい経済は、デプロイされたアプリが144超、オンボードしたユーザーが40万超としている。BlockchainGamerBizは、取引数3億2,500万件超、作成ウォレット約400万、ネットワーク上の事業者の売上が合計4,000万ドル超(約63億円)と報じた。400万はウォレット数、40万はユーザー数であり、両者は別の指標である。チェーン上に残る資産の額はさらにばらつく。Unchainedは、発表直前の時点でL2BEATのデータにもとづき約4,700万ドル(約74億円)と報じた。CoinCentralはDefiLlamaのブリッジ資産指標をもとに約7,600万ドル(約120億円)としている。10月9日時点でL2BEATが表示するTVS(チェーンが担保する資産総額)は約3,017万ドル(約48億円)まで減っており、すでに資金の流出が進んでいることがうかがえる。
技術的な位置づけと移行リスク
L2BEATによると、AbstractはZKsyncのZK Stackで構築されたZKロールアップで、Elastic Networkに属する。データはEthereumのblobに書き込まれる。成熟度の評価は「Stage 0」で、提案者はホワイトリスト制、緊急時のアップグレードには猶予期間がなく、運営者が引き出しを検閲できる余地も残る。ロールアップでありながら、停止後にユーザーが自力でL1から資産を引き出せる保証は明確に示されていない。Blastは期限後もL1のブリッジコントラクト経由で引き出せると説明しているが、Abstractは「アクセス不能になる」と告知している点が大きく違う。移行ハブには、NFTやアプリごとの移行手順がまだ掲載されていない。影響を受けるゲームとしてはPudgy Party、Gigaverse、Cambriaなどが報じられ、一部はRobinhood Chainへの移転を表明したとされる。
停止が相次ぐ背景
直前の10月2日には、Paradigmが出資するBlastも、運営コストが収入を上回るとして停止を発表した(標準UIでの引き出し期限は10月26日)。2025年にはKinto、2026年9月にはHarmonyもL1の終了を表明している。トランザクションを集めるだけでは、シーケンサー収入でチェーンの固定費をまかなえない。そうしたチェーンが整理されていく段階に入ったと言える。
【事業開発に関するインサイト】
- ゲーム会社やIP企業が自社チェーンをつくるかどうかは、「固定費を払ってでも差別化できるか」で判断すべきである。Abstractは40万超のユーザー、4,000万ドル超の事業者売上を実現しても、Igloo本体の収益を削る状態から抜け出せなかった。IPの集客力があってもチェーン運営の採算は自動的には成り立たない。既存の汎用L2の上にアプリとして載せる方式や、共有シーケンサーを使う方式を、比較の基準として最初から並べて検討する必要がある。
- チェーンを始めるときは、終了時の手順もあわせて設計しておくべきである。停止日、L1からの自力引き出し経路、NFTのメタデータやアセットの保存先、移行先チェーンへの再発行ルールを、利用規約とスマートコントラクトの両方にあらかじめ書き込んでおく。Stage 0のロールアップは、運営者が撤退すると保護が弱くなる。日本の事業者が国内ユーザーに資産を持たせる場合、終了時の対応が消費者保護の論点になる可能性が高い。
- 「トークンを出さずに撤退する」という判断は、IP本業のブランドを守る選択として評価できる。発表後、Pudgy PenguinsのNFTのフロア価格は上昇し、PENGUは4〜6%下落した(BeInCrypto、Odaily)。市場は、チェーン事業の切り離しをIP本業にとってプラスと受け止めた。インフラ事業がIP本業の価値を下げ始めた時点で切り離す基準を、IP企業は事前に決めておくべきである。
【引用:出典】
Abstract is shutting down, with Pudgy Penguins' owner focusing on its core brand — BlockchainGamerBiz — https://www.blockchaingamer.biz/news/43020/abstract-shutting-down/ イーサリアムL2「アブストラクト」、12/15に運営終了へ。資産移行呼びかけ — あたらしい経済 — https://www.neweconomy.jp/posts/614665 Abstract关停:有用户、有品牌,却没有生意 — Odaily星球日报 — https://www.odaily.news/zh-CN/post/5213279 Pudgy Penguins Owner Is Shutting Down Its Abstract Chain, Where $47 Million Still Sits — Unchained — https://unchainedcrypto.com/pudgy-penguins-owner-is-shutting-down-its-abstract-chain-where-47-million-still-sits/ Pudgy Penguins-backed Ethereum L2 Abstract to shut down after losing 'tens of millions' — The Block — https://theblock.co/news/ecosystems/2026-10-06-abstract-ethereum-layer-2-shutting-down-pudgy-penguins-igloo-417855 Pudgy Penguins' Crypto Network Is Shutting Down, Here's What Users Need to Know — CoinCentral — https://coincentral.com/?p=213564 Abstract Migration Hub — Abstract — https://migrate.abs.xyz Abstract — L2BEAT — https://l2beat.com/scaling/projects/abstract Abstract's Shutdown Lifts the Pudgy Penguins NFT Floor but Weighs on Its Token — BeInCrypto — https://beincrypto.com/abstract-shutdown-pudgy-penguins-nft-floor/ Blast L2 Winds Down, Sets Oct 26th Withdrawal Deadline — Bankless — https://www.bankless.com/read/news/blast-l2-winds-down-sets-oct-26th-withdrawal-deadline.md
石田陽之(いしだあきひさ)
Cabinet株式会社 代表取締役
免責事項
本レポートは、暗号資産および関連市場に関する情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定の暗号資産の購入、売却、保有その他一切の取引行為を推奨・勧誘するものではありません。また、金融商品取引法その他の関連法令に定める投資助言、投資勧誘、または金融商品の販売・媒介に該当するものではなく、税務・法務・会計上の助言を構成するものでもありません。
本レポートに記載された情報は、作成時点において信頼できると判断した情報源に基づいておりますが、その正確性、完全性、最新性、有用性等について当社は何ら保証するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本の毀損その他の損失が生じるリスクを伴います。投資判断は、利用者ご自身の責任と判断において行っていただくものとし、本レポートの利用に起因して生じたいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いかねます。
ブロックチェーン新規事業のご相談
Cabinetでは、アイデア段階からの壁打ち、技術検証(PoC)、そして実装・運用まで一気通貫で伴走する事業開発コンサルティングを提供しています。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
JPYCが公取委に「決済割引」の見解を提出 ― 手数料ゼロの価値は加盟店規約という見えない壁で止まる
琴平町、金刀比羅宮参道365段の「石段オーナー権利」をNFT証明付きで販売 あるやうむの自治体RWAプラットフォーム「TOKKEN」で1枠5万円・限定40枠
ニュースレターに登録する
本レポートに掲載した内容に加え、業界の最新情報・未公開レポートをメールでお届けします。

